もしかして夫も?と思ったら。夫婦一緒に更年期に向き合うために必要なこと
「最近夫が元気ないな…夫婦ケンカが増えたし、なんかイライラしてる。私が更年期だからなのかなぁ…」更年期になると、妙に夫婦仲がギクシャクしてしまった。そんな声をよく耳にします。自分の不調に加え、夫もなんだかイライラしていて、ケンカばかり。なぜ、ウチは最近上手くいってないのだろう?と悩んでいる人も少なくないはず。そんな方にお伝えしたいのは、実は男性にも更年期があるという事実。男性の更年期症状を知れば、なにか夫婦問題の解決の糸口が見つかるかもしれません。
それって、男性更年期のせいかも!?
今回お聞きしたのは、男性更年期のスペシャリスト堀江重郎先生
- 順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器科外科学主任教授 一般社団法人日本メンズヘルス医学会 理事長
〈堀江先生プロフィール〉
東京大学医学部卒。2003年全国最年少で帝京大学医学部主任教授、2012年より順天堂大学大学院教授。学際的なアプローチを抗加齢医学、男性の健康医学に導入。日本で初めてメンズヘルス外来を始める。著書に『LOH症候群』(角川新書)、『うつかな?と思ったら男性更年期を疑いなさい―テストステロンを高めて「できる人」になる!』(東洋経済新報社)、『いのち』(かまくら春秋社)など。
女性の更年期症状との違いは?
長年、女性特有の症状と思われてきた更年期障害ですが、男性にも同じような症状が表れる場合があります。ただし、女性と男性ではその原因と症状の出かたに違いがあるため、気づきにくいのが難点であり、治療のタイミングを見逃してしまうと重病につながるリスクも。病気ではないけれど心身ともに不調が続き、健康とは言い難い。働き盛りの男性でこのような「いつもと違うな…」と家族も気になるようなことがあれば、それは更年期障害のサインかもしれません。
男性の更年期とは?
男性の更年期症状はどんな症状?
男性ホルモンが低下すると、心と体にさまざまな症状が現れます。精神症状、身体症状として出るものは女性の更年期障害と似た症状ですが、それ以外にも肥満、頻尿などの症状があります。また、男性特有の症状としては、性欲の減退や勃起(ぼっき)力の低下などが起こります。
【精神症状】
- イライラ
- 無気力、趣味や意欲の喪失
- 不眠
- 記憶力、集中力の低下
- 疲れやすい
- 不安感
- うつ症状
【身体症状】
- 筋力低下
- 関節痛。筋肉痛
- 全身倦怠感
- 異常発汗
- ほてり
- 肥満
- 頻尿
【性機能症状】
- 性欲低下
- 勃起不全(ED)
もしかして夫は男性更年期⁉︎ と思ったときの“こっそりチェックリスト”
4つ以上当てはまる人は、男性更年期障害の可能性あり。
□ 体重が2、3kg増えた
□ 笑わなくなった
□もの悲しい・怒りっぽい
□ 夜中に何度もトイレに行く
□ 寝ても疲れがとれないらしい
□ 仕事へのやる気がない
□ 運動機能が低下した
□ 突然のほてりや発汗がある
□ 最近、食欲がない /食後にうたた寝
□ さっき言ったことを覚えていない
□ 注意力が散漫で、運転が下手になった り、ケアレスミスが多くなった
□ 性欲がない
□勃起力が弱くなった
□下痢や便秘に悩まされている
参考/堀江先生作成資料
「誰でも落ち込む日やイライラする日はありますが、その状態が2週間以上続いたら受診してください」
ほとんどの男性は『あなたは更年期だよ』と言われると、反発したり、無視したりするでしょう。夫をスムーズに病院に行かせるためには、声かけの工夫が必要です。「一緒に健康診断に行こう」や「男性ホルモンが多くて“男らしい”人ほど、少し減っただけで影響が出るんだってさ!」などと言って持ち上げてから、受診をすすめると効果的。また、論理的に説明すると納得する人も多いので、「男女、どちらにも思春期があるのだから、更年期もあって当たり前よね」と説明するのもいいでしょう。
自宅でテストステロン測定できるHPテスティングもあるんです!
HPテスティングは、男性ホルモン(テストステロン)の値を測定するものです。自宅で唾液をサンプリングし、郵送するだけで結果がわかります。お問い合わせ、ご購入は《ホルモンテスティング合同会ホームページ》へ
夫婦一緒に更年期に向き合うためのコツって何?
夫が最近イライラしたり、暗かったり、コミュニケーション取りづらくなってしまったのは「男性のテストステロンの低下が関係している」と分かったら、今度はそのテストステロンが上がるような声かけや応対を工夫してみるのも良いでしょう。
●とにかく褒めることがポイント!夫をたくさん褒めるのです!とにかく褒めて持ち上げる→テストステロンの分泌が促されます。
●イライラの原因はホルモン(テストステロン)の低下なので、突き詰めず大目に見る。
●趣味や生きがいを持たせる…同窓会に出席して人と会う機会を作る、ペットを飼う、趣味を探す、ボランティアに参加する、など。
●家庭の中に夫の責務を作り、手は出さないようにする。洗えられた責務を果たし、感謝されることに大きな喜びを感じテストステロンが出る。
●自分が具合が悪い時は、具体的に伝えて夫を頼ると、夫は頼りにされている喜びを感じる。
ーーーーこのように、「旦那は使い物にならない」などとイライラせずに “ちょっと任せてみる” 。そして、満足いく仕上がりではなくても、感謝する。だって、多少助かっていることは事実ですから、あなただって「自分ばっかり…」みたいな損得勘定や気負いが抜けて、少し気持ちが楽になっているはず。Win-Winで乗り越えましょう!
STORY experience会員の皆さんに聞いてみた!「夫とのコミュニケーション法」
●「お互い無理をしないで自由に過ごしたりしました」
●「こちらまで感情的にならないように、冷静であるように心がけました」
●「常に語尾を優しくし、相手の話を遮らないようにしました」
●「食生活に気をつけ、ビタミンDや亜鉛の摂れる食事にしました」
などの声が。
自分の心身のコンディションが悪いとなかなか「感謝する」や「優しくする」というのは難しいかもしれませんが、夫も大変なんだろうなと思ってあげると無駄に言い争わなくて済むのかもしれませんね。イライラしすぎている人に対しては「そっと距離を置く」という回答が多かったです。
男性更年期症状の対処法は?
「軽症なら漢方薬やビタミン剤、睡眠薬の処方で半数以上が改善します。テストステロンがかなり減っていると診断されたら、男性ホルモンを補充する注射をします。医療機関によってはテストステロンの塗り薬も処方できます。価格は注射だと保険診療で1回数百円、塗り薬は自費で月1万円ほど。治療期間は人によりますが、早い人だと3か月以内で効果が出ます」(堀江さん)
〈生活療養〉
●食生活に気をつける…テストステロンの主原料はコレステロール。またテストステロンの産生には良質なアミノ酸やビタミンD、亜鉛が必要なため、バランスのよい食生活を心がけましょう。特に摂取するとよいといわれるのが、ニンニクやタマネギなど、いわゆる「精がつく」食べ物です。ニンニクやタマネギに含まれる含硫アミノ酸がテストステロンの産生を上げるはたらきがあります。またニンニクはタンパク質と一緒に摂ることで、より効果が発揮されます。おろしニンニクやガーリックステーキなどがオススメです。ビタミンDはサーモン、亜鉛は貝類に多く含まれていますが。摂取しにくい時はサプリメントの活用もいいでしょう。
●運動する…運動や筋トレをすることはテストステロンの産生を促し、ストレス解消にもつながります。また基礎体力の向上や糖代謝の改善などさまざまなメリットがあります。運動習慣がない方も、腕立てやスクワットなど、できることから始めてみましょう。
●睡眠を整える…自律神経には日中など活動的なときにはたらく交感神経と、リラックスしているときなどにはたらく副交感神経があります。男性ホルモンは睡眠中の副交感神経が優位のときに分泌量が増えるため、睡眠不足になるとテストステロンが低下しやすい状態に。朝は日光を浴びて体内時計をリセットする、寝る前にPCやスマホを触らないなど睡眠環境を整える工夫を!
例えば…男性が部下にお酒や食事をおごるのは、テストステロンという見方もできるのですが、オキシトシンという愛情ホルモンが出る行為でもあります。男性にとって「与える」という行為は自分自身が元気になるというものプラス、愛情や優しさを引き出す行為でもあるのです!
〈漢方療養〉
症状があっても男性ホルモン値が低値でないために、男性ホルモン補充療法の適応にならなかったり、癌や持病などのため男性ホルモン補充療法を行うことができない場合もあります。他の選択肢が必要となる場合には漢方薬も有効です。
✳︎ご紹介するものは一例ですので、正確には医師の指示に従ってください。
男性の場合、社会的な地位や多忙な仕事、さらに地位や環境の変化などから生じる「うつ」状態を伴う心因的な更年期障害もしばしばあります。女性に比べ男性の場合は社会的要因が大きな比重を占めるとも言われています。この場合は疲労感の改善に補剤や精神状態を整える漢方薬を選びます。
●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)… 疲れやすい、だるいなどの症状に効果が期待できます。
●紫胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)… 男性更年期症状の中で、精神活動の低下や体力の低下による精神症状のうち、イライラしがちな症状、高血圧の方の動悸・不安・不眠に効果が期待できます。神経の高ぶりを沈めて、心と体の状態をよくする漢方薬です。
〈男性ホルモン補充治療〉
男性ホルモン補充療法では、テストステロンの注射を行います。テストステロンを投与する場合には、前立腺がん・肝臓病がある場合は、補充療法を受けることができないことも知っておきましょう。治療期間に関しては個人差があるため、一概には言えませんが、6カ月程度の短期間で済む方もいれば、長期の治療期間が必要になる方もいます。
ときには専門家に頼りながら、健康的な生活習慣を
コロナ渦やストレス社会の現代、働き盛りの男性を取り巻く環境は楽なものではありません。年を重ねるごとに責任は増し、さらにはコロナ渦で生活環境が大きく変わったり、運動不足や食生活が疎かになってしまうことが多い状況です。しかし、そんな毎日を繰り返していると、男性更年期障害のリスクはどんどん高まっていきます。発症を予防する意味でも、日頃から健康的な生活習慣を心がけることが大切ですね。とはいえ、自分だけで判断はできないので、パートナーの様子を見ていて気になり始めたら、医師に相談するようにしましょう。複合的な症状が見られたり、一般病院では相談しにくかったりする場合は、専門病院の受診をおすすめします。加齢とともに現れる症状の原因はさまざま。専門的な見地からアプローチし、正しいケアが大事。少しでも不安に感じたら、生活習慣を変えてみたり、男性更年期障害に詳しい専門医師に相談して夫婦で元気に乗り越えていきましょう!
取材/笹 利恵子
▼STORY編集部オススメの記事はこちら
・失業でなくした役割と誇りを取り戻すために夫の仕事を作ると決意した妻
・プロ野球選手の夫が不本意な引退。そのとき妻がかけた言葉とは
・【更年期のリスク】50を過ぎたらほとんど使命を終えてしまう。そんな臓器は卵巣だけです 〈対談〉産婦人科医・高尾美穂先生×STORYライター柏崎恵理 vol.1