にしおかすみこさん、母親の介護は、”自分が大切だと思う時間を過ごすこと”を心がけて
高齢化に伴って介護を必要とする人の数は急速に増え、家族介護者数は、2001年の470万人から、2016年には 699万人に増加しています。そこで、介護にあたるうえでの心構えや、上手に負担を軽減する方法を体験者の方に語っていただきました。
▼あわせて読みたい
キンタロー。さん、26歳からの父親介護経験を振り返って
にしおかすみこさん(47歳・千葉県在住) お笑いタレント
にしおかすみこさん
SMの女王キャラで大ブレイク。現在は執筆にも力を入れ、FRaU WEBにて母の介護の様子をつづった『ポンコツ一家』を連載中。
“自分ファースト”な介護を
心がけています
心がけています
--今はこの時間が大切な気がするんです。 だから介護を受ける人も「ごめんね」とは思わないで
にしおかすみこさんがお母さんの異変に気付いたのは,20年6月のことでした。引越し準備をしていたときに、実家でちょっと休もうと帰ってみると「昼間なのにカーテンが閉まっていて、家はまるでゴミ屋敷。床は砂埃でジャリッとする。その中で、母が座椅子に座っていました」。
そんな状況が気になり、引越し先を新居から実家に変更することに。そうして、2週間程かけて、掃除をしました。
「最初は何をしても反対ばかり。エアコンが壊れていたので、買い直そうとすると、母はそれにも反対する。今思えば、娘にお金を使わせるのは心苦しかったのかもしれません。そのうえ、口癖のように『頭かち割って死んでやる』と言うし。母は鬱傾向があるので、万が一自殺でもしたら、と怖くなりましたが、ふと見ると、寝ている。『寝るんかい?』って感じでした」。
実家住まいのお姉さんはダウン症。お父さんは元来無頓着で、お酒好きでよく酔っぱらっているので、お母さんが徐々に変わっていくことに気付かなかったと言います。友人に、介護認定を受けるため、検査を受けたほうがいいと勧められましたが、
「本人は大丈夫だと思っているので、病院に連れていくのもひと苦労。地域包括支援センターの方が来てくださったときも、ちゃんとしているアピールをすごくするので、びっくりしました。今思えば、お客さんに見栄を張れるというのは、良いことなのに、そのときは、なんだか疲れて悲しくなりました。私はよかれと思ってしたことでしたが、検査など、母の日常と違うことがあるたびに、認知症が進む気がします」。
そこで、家事をにしおかさんが担うだけにして、今は、介護サービスの手続きは保留にしていると言います。
「火の扱いが心配なので、3食分を作り置きしています。ただ、今母ができることを奪いたくはないので、料理をやっちゃダメとは言っていないんです。以前、母が肉なしの肉じゃがを作ってくれたのですが、母の味がして美味しかった。また、姉の世話は自分がしなきゃと踏ん張ってくれているので、母に任せ、私はフォローに回っています」。
にしおかさんは、そんな家族との暮らしぶりをエッセーとして発信しています。
「情報を提供しようとか何かを伝えようとかではないんです。ただ、ドタバタぶりを笑ってもらって“箸休め”のようになったらいいなと。私は“自分ファースト”と決めています。今は、家族との暮らしが私にとって大切な時間だという気がしています。しんどくなったら一人暮らしに戻るかもしれないし、いずれは施設のお世話になるかも。でもそんなお金もないかも。全部未定のポンコツな娘です。だから、母には私に迷惑をかけていると思ってほしくない。頭にくることもありますが、病気になった人が気に病む必要はない。お互いに自分を責めてもいいことないですもの」。
「介護と言っても、食事の作り置きや、掃除洗濯など、働く主婦の方がこなしていらっしゃることをアップアップしながらしている感じ。いつもと同じ日常が穏やかに続くことが、今の母にはいいのかなと思っています」(にしおかさん)
撮影/BOCO ヘア・メーク/原田なおみ 取材/秋元恵美 ※情報は2022年10月号掲載時のものです。
おすすめ記事はこちら
・知花くららさんが、自身や家族の【未来/ミライ】のために取り組み続けていることとは・年老いていく親にどう親孝行すればいい?【ジェーン・スー×HARUKOの人生相談Vol.26】
・専門家が教える、介護する若者「ヤングケアラー」とは