結婚生活65年のリアル。中村メイ子さん(中編)―― 40代の頃は私も「奥さんずれ」してました【夫婦のカタチ】
40代を折り返し、あと数年で50代……。その先には、ぼんやり漠然とした不安がすぐそこに迫っているのだろうか。そう遠くない未来、自分とパートナーとの、『夫婦としての在り方』とは? にクローズアップするインタビュー連載。
第2弾は、結婚生活65年という中村メイコさん。前回に引き続き、夫・神津善行さんとの暮らしを振り返っていただきながら、夫婦円満の秘訣についてお聞きしました。
中村メイコさん
女優、歌手、タレント。1934年東京生まれ。2歳の時に映画「江戸っ子、健ちゃん」(P・C・L映画製作所/現東宝)にてデビュー。テレビには実験放送時代から出演し、数々のドラマ、バラエティ、映画に出演。1957年に作曲家 神津善行氏と結婚し一男二女を設け、「神津ファミリー」として親しまれる。
犬も食わない夫婦喧嘩はしなかった?
――神津さんが子煩悩で家事・育児に協力的なら、夫婦喧嘩なんてされなかったのですか?
いえ、いえ。それはもうしょっちゅう。喧嘩ばかりしていましたよ。
今は、婚期が遅くなりましたけれど、私たちの40代は結婚して20年たっていますから、お互い図々しさが出る。私のほうも「奥さんずれ」していますでしょう?
ましてや、かたや音楽家、かたや女優で、お互い表現するのが仕事ですから、隠しておくことができない。〈今日は機嫌が悪いな〉なんていうのはすぐにわかるんです。
そのうえ私は、普段素敵な男優さんに囲まれていて、寒ければパッとコートをかけてもらえるような環境にいるわけです。すると、夫というものが、なんともそっけない存在に思えてしまう。もちろん今でこそ、素敵な俳優さんたちだって家に帰れば神津さんと同じ普通の旦那様なんだとわかっているんですけれどね。
ただ、若いうちに言いたいことを言い合うのは、お腹の中に一物持って、知らんぷりして暮らしているよりも、いいんじゃないでしょうか。
お互いに思っていることをぶつけ合って、直せるところは直しながら、いい夫婦になっていくチャンスですから。
でも、この年齢になると喧嘩はもうしません。
言い合っても、お互いに今さら変われないし、エネルギーの無駄遣いです。
喧嘩のタネになるようなことは、ぐっと飲み込みます。
つい爆発してしまったときは、すぐに謝るようにしています。
例えば、こんなことがあるんです。
神津さんは本当に物知りで、知らないことがないんです。辞書と一緒に暮らしているみたい(笑)。
私は仕事柄、いろいろなコメントを頼まれることが多いのですが、政治経済のことは、まるでわからない。
「何て答えたらいいのかしら?」と聞くと、その都度、私にわかりやすく説明してくれました。おかげで、どれだけ助けられたかしれません。
でも、最近は、まるでわからない分野のコメントは、お断りするようにしているんです。変なコメントをするくらいなら、そのほうが親切だと思って。
それなのに、神津さんは急に「TPP」だとか「徳川家康」だとか、いろいろなことについて講釈を始めることがあるんですね。
難しくてわからないし、〈ちょっとうるさいなあ〉と。
でも、無駄な喧嘩はしたくないので、ふんふんと聞き流してしまっていますね。
――そうやって、喧嘩にならないようにするというのも、現在のご夫婦の“距離感”なのかもしれないですね。
夫婦の距離感って、本当に難しいと思います。
私は父が物書きですから、旦那さんはいつも自分の部屋に閉じこもって仕事をしてるというのが当たり前だと、子どもの頃から思っていました。
作曲家の夫は父と同じように、今も朝ごはんを食べ終わったら、「じゃ、俺は仕事をするから」と言って、自分の部屋に入っていきます。
そのあと、ずっと仕事をしていることもあれば、出かけることもありますし、逆に私が仕事に出かけることだってあるので、お互い自由に過ごしています。
二人が家にいるときも、お昼は食べたり食べなかったりなので、夕方過ぎまでは顔を合わせることがありません。
よく、〈定年退職後の主人が家にずっといるから大変〉という話を聞きますけれど、家でずっとべったりしていたら、それは大変だろうと思いますよ。
お互い、自分だけの居場所を確保して、四六時中一緒にいないようにするほうが、うまくいくのではないかしら。
今は在宅ワークをされている方も多いので、スペースを分けて、干渉し合わない工夫も必要ですよね。
撮影/BOCO 取材/秋元恵美
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