【性教育ワーク連載vol13】「剃る?」「脱毛する?」「そのままにする?」子どもと考えよう、カラダの毛のはなし

親子の15分性教育ワーク。今回は、思春期の頃から気にし出す子もいる、カラダの毛についての話です。

いきなり質問なのですが、この中で「ムダ毛」はどれだと思いますか?
①すね毛
②わき毛
③陰毛
④人間にムダな毛なんてない

「①、②、③は全部『ムダ毛』。剃るべし!」「他人に見えちゃうから①と②」「もちろん④」など色々な意見があるかと思います。

カラダの毛に対する考え方はひとそれぞれ違っていて当然。最近は「自分は、自分のカラダの毛をどうしたいか」を大事にする人、表明する人が増えてきたと感じています。以前の脱毛系の広告は、「ムダ毛」という言葉に代表されるように、わき毛やすね毛を「ムダ」なものと決めつけて、「ツルツル素肌に」「キレイになろう」と勧めたり、「すね毛やわき毛などのムダ毛を無くそう!」「女性は脱毛してあたりまえ」みたいな価値観を押し付けたりするものをよく見かけていました。

また「この夏は水着を着られるように脱毛しよう」のように、自分がどうしたいかよりも「他人から見られてどう思われるか」というところを強調するものが多くありました。

最近の広告でも、まだツルツルの肌至上主義的な物もありますが、「自分のため」「自分にとっての心地よさ」を表に出すものが増えてきていますし、男性向けのものも見かけます。

また、カラダの毛を自然のままのほうがいいと思う人も増えて、ヨーロッパアメリカ、そして日本でも一部で、生やしたままにすることが流行っています。わき毛を染める人も出てきています。陰毛を、短く切り揃えたり、脱毛する人もいます。

そもそも、カラダの毛はひとりひとり大きく違っています。毛の生える範囲、濃さ、毛の長さ、ちぢれ具合、どれも個人差が大きいですし、生まれつき毛が生えない人や病気で毛が薄くなったりする人もいます。もともと持っているカラダの毛はひとりひとり大きく違うし、理想的な状態も違います。それなのに「ツルツル最高!」という価値観のもと、「ムダ」と決めつけられた毛を剃ったり、脱毛したりする必要はないですよね。

そんなひとりひとり違っているカラダの毛ですが、カラダ全体が大きく変化する思春期に、悩み出す子がいます。

思春期の頃からは性ホルモンが毛の根もとの細胞に働きかけ、ひげ、胸、わき、陰部、すねなどに毛が生えはじめます。そんな時に、「周りの人と比べて毛が濃い(薄い)」と悩んだり、友達から「毛、生えてくるの早くない?」「剃らないの?」と言われて、落ち込んだりする人もいます。

●思春期の頃からカラダに毛が生えてくるけど、それはひとりひとり大きく違うこと。
●カラダの毛の生え方に正解なんてものはないこと。
●カラダの毛を、そのままにする、染める、剃る、脱毛するなど、自分で決められること。
●剃ったり脱毛したりする時には、肌をいためたりしない方法があること。

こういったことを親子で一緒に考えられるといいな、と思っています。

それではワークを始めましょう!

今回の15分ワークのお題

①カラダの毛はどこに生えてくるか知ってる?
②カラダの毛をどうしたい?
おまけ その1 キッズ脱毛はアリ?ナシ?
おまけ その2 除毛剤に気を付けて

①カラダの毛はどこに生えてくるか知ってる?

まずは、「カラダの毛ってどこに生えてくるか知ってる?」と子どもに聞いてみてください。
ひげ、うで、わき、すね、などいくつかの場所が出てきたら次へ進みます。

「思春期の頃から今まで無かった場所に毛が生えたり、濃くなったりするんだって」と話し、一緒にイラストを見ながら、または言葉で説明しながら、親子で一緒にカラダの毛が生える場所を確認していきます。

一緒にカラダの毛の生える場所を確認したら「カラダの毛が生える場所とか、濃さとかはひとりひとり全然違うよ。あと、生まれつき毛が全然生えなかったり、病気で薄くなったりする人もいるよ」と伝えてください。

②カラダの毛をどうしたい?

「自分のカラダに毛が生えてきたら(もっと生えてきたら)どうしたい?」と子どもに聞いてみましょう。

「なんか面倒くさいから、そのままかな」「剃りたいなー」などの返答があったら、進みます。

「カラダの毛をそのままにする人もいるし、剃ったり、脱毛したりする人がいるし、髪の毛みたく染める人もいるよ。そして、カラダの毛をどうするのかは自分で決められるよ。」と話してみてください。

そして、「カミソリとか、脱毛シートを使って自分でやる方法と、サロンとか美容クリニックとかで脱毛する方法とか、色々あるよ。かかる値段が全然違うし、気を付けないと肌を傷つけたりすることもあるから、やりたくなったら相談してね」と伝えておくのがいいと思います。

おまけ その1 キッズ脱毛はアリ?ナシ?

脱毛系広告の中で最近増えてきているのが、キッズ脱毛のもの。広告をみて「キッズで脱毛って……令和すごいわ」と驚いた方がいるかもしれません。

キッズ脱毛の広告が存在すること自体が、「子どもも脱毛しないと!」というメッセージを与えてしまっているのではないかと心配にはなります。ただ、カラダの毛を減らす方法としては、カミソリで剃ったりすることよりも肌へのダメージが少ないので、「毛を剃る度に肌荒れして困っている」人にはいいかもしれません。

他の方法と比べて値段が高い、時間がかかる、日焼けしているとできないなど、欠点もありますが、選択肢のひとつとして考えてみるのもアリだと思います。

おまけ その2 除毛剤に気を付けて

除毛剤は、化学的に毛のたんぱく質を溶かして毛を柔らかくし、毛を除くもの。脱毛ワックスやテープのような、物理的な力で毛を抜くものとは違います。

ここ数年除毛剤のトラブルが多く、消費者庁から先日注意喚起が出ました。顔に使用して発疹が出た、カラダに使って炎症が起きたなど、若者を中心にトラブルが起きているようです。ネット上で簡単に、比較的安く手に入るようなので、もし子どもがカラダの毛を脱毛したいと考えているのなら、除毛剤のトラブルについて情報共有しておくのがいいと思います。

詳しくは消費者庁の注意喚起をごらんください。

注意喚起はこちらをクリック

お疲れ様でした!

〈次回へつづく〉

次回は、興味がある人も、ない人も、悩むことがある、恋愛についてです。

イラスト/ばばめぐみ ※イラストは書籍「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」(ほるぷ出版)から抜粋

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アクロストン

妻(みさと)・夫(たかお)であり、12歳、10歳の子を育てる親でもある、医師2人による性教育コンテンツ制作ユニット。
公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。
家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。

著書:「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」 (ほるぷ出版)、「3~9歳ではじめるアクロストン式 『赤ちゃんってどうやってできるの?』」、「いま、子どもに伝えたい性のQ&A 、思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(ともに主婦の友社)
監修:シールでぺたぺた「おうちせいきょういくえほん」(主婦の友社)

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