【漢字】「愛猫家=あいねこか」は間違い!実は読めない、猫に関する漢字3選|CLASSY.
空前の「猫ブーム」と言われています。テレビでは、猫が登場する番組やCMが繰り返し放映され、出版業界でも猫写真集だけではなく、さまざまなジャンルに猫関連本が波及しています。これもコロナ禍で「おうち時間」が増えた影響のひとつでしょうか。自宅で猫を飼う人も増えました。猫と過ごす時間に「癒(いや)し」を見出す人も多いかと思います。
そんなわけで、今回は「猫」関連の言葉の中から、読み間違えやすい漢字を紹介していきます。
1.「愛猫家」
最初は「愛猫家」です。その意味は、漢字を見ればすぐ分かりますね。「ねこをかわいがる人」のことです。では、何と読むのでしょうか?
「あいねこか」と読んだ人はいませんか?「猫」のライバル(?)である「犬」なら「愛犬家」。これなら問題なく「アイケンカ」と読めますね。このように、熟語の場合は音読みで読むのが原則ですから、訓読みの「ねこ」ではだめです。正解は「アイビョウカ」でした。「猫」の音読みには、常用漢字表にある「ビョウ」と表外の「ミョウ」があります。「ミョウ」は昆虫名の「斑猫(ハンミョウ)」で使います(山道を歩いていると道案内をするかのように人の前を飛ぶ、あの虫のことです)。
また、「猫」を「ビョウ」と読む熟語も、それほど多くはありません。最近は「美猫(ビビョウ)」という語を聞くことがありますが、手持ちの国語辞典には未収録です。強いて言えば、狭いことのたとえに使われる、「猫(ねこ)の額(ひたい)」の熟語版である、「猫額(ビョウガク)」くらいでしょうか。
2.「猫を被る」
次は、慣用句である「猫を被る」です。「猫」は訓読み「ねこ」です。さて、何と読むでしょうか?
「ねこをこうむる」と読んでしまった人はいませんか。常用漢字「被」の訓読みは、たしかに「こうむる」です。「被害」なら「害を被(こうむ)る=損害を受ける」という意味ですね。しかし、表外読みとして「被(かぶ)る」というのもあります。「猫を被る」というのは、「本性を隠し、おとなしそうに見せかける」という意味で使う慣用句なので、正解はこの読み方、「猫を被(かぶ)る」でした。
この言葉の語源は諸説ありますが、一般的には、動物としての本性を隠した、猫の見た目やしぐさのかわいらしさに由来していると言われています。
3.「窮鼠猫を嚙む」
最後は、少し難しいかもしれませんが、ことわざの「窮鼠猫を嚙む」。「猫」の字が入ったことわざですが、主人公は「ねずみ」のほうです。「追いつめられたねずみは、猫にもかみつく」という意味になります。さて、何と読むでしょうか?
正解は「きゅうそねこをかむ」でした。「窮鼠」の読みがポイントですが、「追いつめられたねずみ」のことです。常用漢字表にない「鼠」は、訓読み「ねずみ」と音読み「ソ」の読みを持ちます。「ねずみ」は読めても、音読み「ソ」はなかなか読めないのではないでしょうか。「殺鼠剤(サッソザイ)」なんていう言葉もありますが、一般的ではありませんからね。また、「嚙」も常用漢字外です。この字は「噛」と書かれる(変換される)ことが多いのですが、漢字右側の構成部分の「齒」は「歯」の旧字体ですので、本来は「嚙」と書きます。
さて、この「窮鼠猫を嚙む」ということわざは、「弱者でも追いつめられると強者に逆襲する・死にものぐるいになれば弱者でも強者を苦しめることがある」というたとえとして使われます。つまり、強者に対しては、「弱者を追いつめすぎてはいけない」、弱者に対しては、「強者にもあきらめずに反撃するべきだ」という、両方の立場の者に対する教訓がこめられています。
いかがでしたか?まだこのテーマのネタがありそうなので、近いうちに続編を配信予定です。今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)