【アヴちゃん×森山未來】映画「犬王」公開記念スペシャルインタビュー!
5月28日より全国ロードショーを迎えるアニメーション映画「犬王」。南北朝から室町期に活躍した能楽師・犬王の一生を描いたミュージカルアニメーションで、W主演としてボイスキャストを務めるアヴちゃんと森山未來さん。物語の中心となり、世間を熱狂の渦に巻き込んでいく犬王役と、犬王に寄り添いバディとして共に歩む友魚(ともな)役。それぞれのキャラクターをどのように演じたのか? 役への思いや10年ぶりの共演に込めた思いなど、たっぷりお話を聞かせていただきました。
「アヴちゃんが出るなら僕もやります」W主演が実現したワケ
-監督に湯浅政明氏、キャラクター原案に漫画家・松本大洋氏、脚本には野木亜紀子氏、音楽には大友良英氏と、制作陣にそうそうたる面々が名を連ねる本作。お二人は、作品へのオファーがあったとき、最初に感じたのはどのような気持ちでしたか?
アヴちゃん:私が依頼をいただいた時は、コロナ禍に入りたての時、一昨年…2020年の2月ですね。ロックバンド「女王蜂」としてのアリーナツアーが中止になって、これからどうしようかって悩んでいたタイミングでいただいたお話でした。まさかアニメーション作品の主役に抜擢いただいたことにすごくびっくりしましたし、W主演と聞いたので、相手役が誰なのかも気になりました。そうしたら、森山未來氏って言われて「やば〜!」って(笑)。「(森山さんが)アヴちゃんが出るならやるって言っている」って聞いて、そんなん絶対出るやん!って思いました。
森山未來さん(以下、森山さん):僕がオファーをもらったのも同じくらいだったかな。猿楽師をアヴちゃんがやって、そのそばにいる琵琶法師が私、ということを聞いて、今アヴちゃんが言った通り、「アヴちゃんがやるんだったら絶対面白いと思うからやります」と。それだけでしたね。
犬王はギャル成分を抜いた私。アヴちゃんが捉えた“犬王”というキャラクター
アヴちゃん:お話をいただいてすぐ「絶対出る!」って気持ちになって、そこからスタートでした。そのまま本屋さんに行って、原作を買って読んで。オファーの時に、湯浅監督だったり野木さんだったり、大友さん、松本さんというお名前も伺って。まだ企画としてはざっくりしてる状態だったんですけど、絶対にすごいことになるとは思いました。でも一方で、アニメ原作で私がこの役をやるって考えてリサーチしていっても、犬王という存在が名前しか残ってないっていうのもあって、ブルーオーシャンすぎて(笑)。「こういう感じかな?」っていうのが、ないんですよね。結局やってみて、何をしてもOKなんだなって思ったんですけど、逆に何をしないことでどう浮き彫りにしていくかも大事で。出演が決まってからすぐの段階では、面食らった覚えがあります。
-アヴちゃんは、事前に原作を読んで物語に触れてみて、どんな印象でしたか?
アヴちゃん:原作を読むと、すごくロマンチックで蜜月な様子が美しく、でもカッコよく描かれていた、あっという間に読み終わっちゃいました。行間もすごく大事でしたね。第一印象は「すごくロマンチックだな」だったんですけど、これを自分が演るって思って読んだ時、「演れるな」って思ってすごく高揚しました。犬王って、ギャル成分を抜いた私じゃん!って思ったんですよね。
アヴちゃんがやる、それだけで絶対すごいことになる
-アヴちゃんはバンドのボーカル、森山さんはダンサー・俳優と、普段声優として活動をしているわけではないですか、今回のお仕事にあたって何か難しさがありましたか?
アヴちゃん:お作法ができてない門外の方がアニメに参入する時のストレスは、アニメが好きな人からすると結構アレルギーがあるだろうなと思いました。歯の矯正をしていて、当時も真っ最中っだったのもあって、滑舌とかも気にしてはいました。オーディションで勝ち取ったわけではなくしっかりお話いただいて、名指しでいただいたということの物凄さもあって、犬王というこの役を、このタイミングで、わたくしがやっていいのか?と思ったりもしたんですけど、原作を読んで、「いいのだ!」って。この早さ! 初めは「アニメ? 私が?」って思ってたんですけど、原作を読んだことで、これは私が演りたい、そりゃ私、名前が挙がるね、と感じました。
森山さん:もちろんプレッシャーはありますよね。声優の皆さんの技術や能力というものは、僕が普段やってることとはもちろん違う。そこへのリスペクトはあるし、凄さはわかってるつもりです。とはいえ、アヴちゃんや僕だったりにオファーがくるってことは、求められているものがそこではないんだろうなと。それでも文句を言われるであろうことは想像がつくんですが(笑)。実際の声優さんじゃない人をあえて起用するっていう前例はあるし、僕も過去にそういう経験をしているので、そこを信じてやるしかないって感じでしたね。何かしら仕事のオファーをいただいたとき、すごく面白そうだけど、どうかな…って思うこともあるんですが、今回はそういうのもなく。アヴちゃんがやる、その一択でやりたいと思いました。アヴちゃんがやるってことは絶対おもろいものになるだろうって。
お互い、いい意味でヤバイ。2人の信頼関係の源とは?
-お二人は映画「モテキ」以来、10年ぶりの共演となりますが、当時と今、お互いへの印象は変わりましたか?
アヴちゃん:当時私たちは若さの暴走みたいなバンドで、長く続けるとか考えてもなくて好き勝手やってただけだったんです。映画に出ることのすごさも、どこかよくわかっていなかった。俳優さんという存在もどこか画面の中の人というか、体温を感じるような距離まで近づいたことがなくて。でもいざ撮影になったら、未來氏がライブに来てくれたり、ライブでステージで一緒になったり、家に行ったり遊んだり、すごく距離が近づいて。それで初めて「こんな情熱を持ってる人っておるんや。めっちゃおもろい!」と感じていました。人格、そしてテーゼまで初めておしゃべりして、察することができた俳優さんやったから。俳優さんっていうとアレやねんけど、どこにも属さない無頼でありながら、誰かと手を組んだ時にスーパー力を発揮するし、でも何かに駆られてるっていう。当時の大変な時期を、至近距離ではないけれども遠くから、近くから、少し見せてもらって。
森山さん:もちろん初共演は映画『モテキ』ってことになるんですが、映画版『モテキ』の公開が2011年で、その翌年2012年に僕は「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」というミュージカルに出てるんです。その舞台の構想は2年くらいずっとあたためていて、(『モテキ』の監督でもある)大根さんにも演出として入ってもらっていたんですけど。現代にヘドヴィクをどう作っていくかみたいな話を揉んでたときに、大根さんから「いやぁ、すごいバンドがいるよ、今」と言われて教えてもらったのが女王蜂で。それでライブ映像を見た時に、その舞台に向けて今まで少しずつ構築されていたものがガラガラと崩れてしまったというか、このままではこの人たちに太刀打ちできるものにならないなと感じて、はじめから作り直したような記憶があるんです。だから、「モテキ」の記憶というよりも、その前の瞬間。女王蜂と出会ったときのことを強烈に覚えています。あれは、何かの学祭とかの動画だったのかな。
アヴちゃん:あははは!そう、やばいやつやんね。懐かしい。
森山さん:その衝撃があまりに大きかったんですよね。それでまあ、「モテキ」でお会いして、っていう流れで。
アヴちゃん:で、気付いたら10年後にW主演で、しかもアニメっていう。うれしいですね。今回は、演技というか臓物の強さを試されるような、どれだけ吐かずに飲めるか、吐くとしたらどれだけ吐けるかみたいな、そういう地の強さみたいなものを試される作品。アニメって意外と地を試されるんやなって思っています。歌って演技する場合は特に。
森山さん:いや、多分今回って従来のアニメの進め方ではないんじゃないかな?(笑)
アヴちゃん:ちょっと違ったかな? ちょっと違うかもしれない。未來氏談ですけども。
森山さん:だって、ね? アヴちゃんは歌詞を自分で紡いでいるんですよ。もともとの台本には、どのような物語が語られるかが歌詞として綴られてはいたけれど、それを最終的にアヴちゃん自身が自分の言葉にちゃんと噛み砕いて咀嚼して、ものにしているわけですから。薔薇園アヴが。だから、これがアニメの通常のプロセスってわけではないと思うけどな。
アヴちゃん:ほんま? じゃあ「とんでも〜!」なことなのかもしれないですね。でも一緒だから楽しめたっていうか。映画の最後の楽曲でやっとデュエットするんですけど、未來氏がそのハモリを考えてきたときにベットしてるなって感じたんです。もともとベットしている人だってことはわかってたんですけど、自分の考えていることを人前に出す時、自分がやってるフィールドじゃないって思ってる人だと、そこで拘っわっちゃってるとシャイしちゃうじゃないですか。でも、今回はお互いにそれを超えた遠慮のなさがあって。会うたびにお互いのヤバさを、「ヤバいな、ヤバいな〜、ヤバいよな〜〜〜」みたいに、確認してましたね。
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映画『犬王』5月28日(土) 全国ロードショー
南北朝から室町期に活躍した能楽師・犬王の一生を描いた古川日出男氏の小説「平家物語 犬王の巻」が原作のミュージカルアニメ。漫画家の松本大洋氏がキャラクター原案、野木亜紀子氏が脚本を担当し、犬王役をバンド「女王蜂」ボーカルのアヴちゃん、犬王とバディを組む友魚(ともな)役を森山未來が務める。歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。
公式サイト: INUOH-anime.com
公式Twitter: @inuoh_anime
撮影/望月宏樹 ヘアメーク/木村ミカ(アヴちゃん分)須賀元子(森山さん分) スタイリング/アヴちゃん(アヴちゃん分)杉山まゆみ(森山さん分) 取材・構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)