自己肯定感を高めるにはどうしたらいいですか?【尾木ママ連載vol.7】
第7回は、多くの親御さんが願う「自己肯定感の高い子」にしたいけど、そうなる要素が見当たらないというお悩みです。
K.Mさん(47歳)子ども小学6年生の悩み
息子の通う私立小は教育熱心な親御さんが多く、サッカー、空手、水泳、英語、体操、プログラミングなど色々な習い事を複数しています。我が家は共働きで送迎などもできないので、通える範囲の水泳に通わせるくらいです。そのため特に人より優れた特技もありません。息子は「○○くんは足が速い。○○さんはピアノの天才。○○くんはバク転ができる!」と話していて、このままでは自分が何もできないと思ってしまうのではないかと思います。特別な才能はないのですが、せめて自己肯定感が低い子にならないようにしてあげたいと思いながら、何もできません。
尾木ママ’sAnswer
今、自己肯定感を高める教育というのは世界的にも共通の認識として極めて重要なテーマと考えられています。
自己肯定感とは、簡単に言えば「ありのままの自分を好きでいる気持ち」のこと。自己肯定感が高い子は、心が安定していて、いろんなことにくじけにくいレジリエンスを持っています。自己肯定感は自立の土台にもなるのです。
日本人は世界的に見ても自己肯定感が低い状況にあります。島国で他者との均一性が求められてきたからとか、日本人特有の謙虚さが影響しているとか、諸説ありますが、やはり文化的な環境や教育が関係しているのではないでしょうか。
さらに日本の学校文化は基本的には一斉主義で一クラスの人数もまだ多いですから、必然的に競争を生み出し、上手下手、早い遅いなど序列ができ、他者と比較されがちな側面もあります。
価値基準が自分になく常に他者や世間体が基準となるようだと、それを自分が満たしていなければ自信が持てず、己を愛することができず卑屈になってしまう場合もあります。それではとても生きづらいですよね。
では、子どもの自己肯定感を高めるには、どうしたらいいでしょうか。それにはまず、親が子どものありのままを認めることが必要不可欠です。
「あなたが、生きているだけで素晴らしい」「顔洗って、ご飯食べて、それができているだけでありがたい」という気持ちを子どもに伝え、今そこにある姿、今できていること、存在そのものを愛することです。日本人は真面目で頑張り屋さんだから、「そう言われても何もやり遂げていないのに認めるなんてできない!」というお母さんたちの声が聞こえてきそうですね(笑)。でも、できたから褒める、できないから褒めないというのではなく、子ども自身の存在を尊重する、「認める」ことが大切。ぜひ、「何ができなくてもあなたはあなたでいい」と伝えてあげてください。
実は、自己肯定感には2種類あります。
1.絶対的自己肯定感
2.社会的自己肯定感
一つ目の「絶対的自己肯定感」というのは、他人との比較や評価の結果ではなく、ありのままの自分を愛せる感情です。たとえ成績がオール1でも、徒競走がいつもビリでも、あるがままの自分を愛せる本質的な意味での自己肯定感です。
二つ目は他者と比較し自分が優れているという結果によって自分を評価する感情です。テストの結果などの評価や世間体などが基準となる自己肯定感です。簡単に言うと、ありのままの自分ではなく、結果を出して社会的な評価がされた・されうる自分を受け容れる気持ちです。
一般的に自己肯定感と言ったときは前者の「絶対的自己肯定感」を指します。しかし、世の中では後者の社会的自己肯定感を子どもに育てようとしてしまっている親御さんや先生方も目立つように思います。ちょっと厳しいですが、親御さんの中には「自己肯定感」を「社会的自己肯定感」の方で捉え違えてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
この方のお悩みも、「人より優れた特技などもない」というところに注目すると、これは2つめの自己肯定感に関係しているようです。
最近ではこのご質問者さんのように、「人より秀でているものを見つける」ためにいくつもの習い事をさせているご家庭が目立つように思います。ここで改めて、習い事は何のためにさせているのか、その目的をしっかり考えて欲しいと思います。
子どもに習い事をさせる理由は各家庭で様々あるでしょうが、子どもが何をやりたくて、何が得意かを大事にしてほしいと思います。そして、何を選ぶのかの決定にはぜひ、子どもの意見を聞き尊重してあげてください。自分のことを自分で決める「自己決定」の経験を積むことで、その結果を受けとめる「自己責任感情」が育ち、子どもの自己肯定感はさらに強固になっていくのです。
特に思春期は「疾風怒濤の時代」とも言われるように、自分自身が何者かわからなくて、他人と比べたり、自分を好きになったり嫌いになったり、もがき苦しみ葛藤する時期です。そういう時期でもありのままでいいんだよと愛されて大切に育てられてきたという自己肯定感の高い子なら、たとえ失敗したとしても、自分は自分で大丈夫だ、という心の「安全基地」に戻ってくることができるのです。
自己肯定感を育てる親としての姿勢は乳幼児期から大切ですが、思春期の子どもの不安定な時こそ「あなたはあなたのままで大丈夫」と言い続けて自己肯定感を高めてあげてくださいね。
取材/小仲志帆
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