元宝塚・美弥るりかさんインタビュー|主演ミュージカルで憧れの大先輩と共演!
宝塚歌劇団退団後、幅広く舞台で活躍している美弥るりかさん。気鋭の演出家・小林香さんによるオリジナル作品、Musical『The Parlor』の主演が決定! 三世代にわたる女性たちの物語を同じ宝塚OGの剣幸さん、花乃まりあさんと演じます。2回にわたり、美弥さんの舞台にかける思いや共演者とのエピソードなどについてのインタビューをお届けします!
――演出家・小林香さんのオリジナル作品、Musical『The Parlor』主演のお話がきた時の気持ちと脚本を読んだ感想を教えて下さい。
「0から生み出されたオリジナルの作品に出てほしいといわれるのはとても光栄なことなので、挑戦したいと思いました。親子三世代の物語なのですが、女性の悩みって年代ごとに変化すると思うんです。私自身もそうですが、観てくださる方も舞台に登場する3人の女性に対して、今だけでなく昔やこれからの自分とリンクするところがあるんじゃないかなって思います。私が演じる主人公の朱里にもいろいろな悩みがあり、これが作品のメッセージにも深く関係しているのですが、私も宝塚を卒業したときに憤りまではいきませんが女性と男性の立場についていろんな疑問を持ちました。『男役を辞めたらドレスを着ないといけないの? 私は役者ではなく女優になるの?』などです。この気持ちを、主人公を演じるリアルさに繋げたいなと思っています。お客様には共感してもらったり、ご自身が感じる疑問を改めてみつけていただければいいなと思います」
――お稽古が始まっていますが大変なことはありますか?
「今回演じる朱里は私と同世代の日本人なので、演じやすいはずなんですけど…。最近、悪役とか幻とか特徴のある役が続いていたので(笑)、普通にしゃべることが大きな壁になりました。もう一つ難しかったのは、他の演者さんのハートフルなシーンに共感してしまうこと! 思わずうるうるしちゃうんです。でも朱里は人を拒絶したい性格だから、そんな感情にはならないわけで。役になりきらなくては!と思っています」
―― ジェンダー問題などの難しいテーマをカンパニーの皆さんでどう共有していますか?
「本読みの後に皆でセッションをする機会をもらい、男性や女性の常識や不自然に思うことなどについて話したんです。私は先ほどもお話したように『演じるうえで〝男〟とか〝女〟とか必要あるの?って思っています』とお話しました。他の演者さんはまったく感じたことがないという方もいたし、疑問に思っていなかったけど考えてみるとストレスだったかもという方もいました。自分と違ういろんな感じ方の方がいるのを知れたことは、本当にいい経験でした。セッションで演者の皆が話したことはご自身の人生とリンクするんじゃないかと思うんです。だから台詞が台詞に聞こえず、一人の人が自分の言葉で話しているように聞こるので私の心が共鳴するんです。さらに香さんが一つの台詞に関して、この台詞に至るまでのご自分の過去やこの台詞がどんな思いに繋がるかまでお話してくださるんです。だから、台詞にどんどん心が入っていくように感じていて! お稽古が始まってまだ3日なのにすごい濃厚! 一カ月後はどうなっているんだろうって思っています(笑)」
――アメリカのミュージカル界で活躍する作曲家、アレクサンダー・セージ・オーエンさんが作曲を担当されています。
「海外で活躍されている方がこの作品のために曲を作ってくださるということで、ドキドキしています! 今回の作品は二極化したものがいろいろと登場します。懐かしい場所のパーラーと現代的なゲーム、ジェンダーに対して積極的な動きと保守的な考えなどです。それがうまく表現されている曲なんですよ。わかりやすく言うと、懐かしいフォークソングに現代的な要素がミックスされている感じです。まだ数曲しか聞いていませんがシンコペーションばかりという印象なので、譜面として読むと時間がかかりそうです。英語で作詞されているので、日本語にしたときもリズムがうまくはまるといいなと思っています。一番気になっているのは皆でゲームをやるシーンの音楽。まったく想像がつかないので、どんな曲になるのだろう?と今からワクワクです!」
――共演する宝塚OGの剣さん、花乃さんとのエピソードを教えてください。
「すごく個人的な話になりますが、剣さんがトップで活躍されていた時代の月組さんが大好きで、剣さんの時代に出会っていなかったら私は宝塚に入っていませんでした。共演できると聞いたときは大興奮しましたし、小学生の頃の私に『将来、剣さんと共演できるよ!』って言ってあげたくなりました(笑)。実際にお会いしたら心が大きくて、とても自然で! 想像していた以上に素敵な方でした。剣さんのお芝居をこんなに近くで学べることに喜びを感じています。役者の自分とファンの自分がごちゃごちゃして困ることもありますが(笑)」
――ファンとしてのお気持ちは伝えましたか?
「少しお伝えました。本当は山ほどあるんですけど、ご迷惑だろうと思うので(笑)。でも気持ちが抑えられず、今日は『〝天使の微笑・悪魔の涙〟が大好きでした。再演してほしいですがあの役をできる人がいないですね』と暑苦しく語らせていただきました(笑)。かのちゃん(花乃まりあさんの愛称)は『宙組に可愛い子がいるらしいよ!』って噂になるくらい注目されていた娘役さん。同期の男役たちといたときに廊下ですれ違ったので、思わず話しかけちゃったくらいです(笑)。見た目は可愛らしいけれど、話しをするとしっかりとした印象だったので好感を持ちました。同期の明日海りおの相手役だったこともあり、共演していないのですが親近感を持っていました。今回は二役ですので大変だと思いますが、取材で『一人の女性として強くなっているのを実感している』と彼女が言っていたんです。その気持ちは今回の役に活かせるだろうなと思うので、可愛い娘役さんが頼もしい女性になっていくのを見守りたいと思っています」
美弥るりか
‘03年宝塚歌劇団に89期として入団。華のあるダンスと演技力で人気を集める。`19年6月退団。退団後は中性的で妖艶な容姿を活かし多くの舞台で活躍している。
Musical『The Parlor』
気鋭の演出家小林香によるオリジナルミュージカル作品。三世代の女性により守り継がれてきたパーラーを舞台に〝なりたい自分を求め〟集う人々の物語。宝塚OGの美弥るりかが主演を務め、剣幸、花乃まりあが共演。音楽はアメリカを拠点に活躍するアレクサンダー・セージ・オーエンが担当。4月29日(金)~5月8日(火)東京公演(よみうり大手町ホール)5月14日(土)、15日(日)兵庫公演(兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)
撮影/平井敬治 ヘアメーク/丸山智路 スタイリング/津野真吾 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室) 衣装協力/WildLily