ヒーリング効果絶大!『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』|辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2022 vol.33
ボーイスカウトをテーマにした映画『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』。文字通り東西ジャニーズJr.が22人も登場、殺伐とした世界のニュースに疲れた心を癒してくれるこの作品について辛酸さんにレビューしていただきました。
アカデミー賞ヒーリング部門があったらノミネート確実
グラミー賞やアカデミー賞など世界的に重要な賞が発表になっていましたが、今年最も癒される映画といえば『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』。アカデミー賞ヒーリング部門があったとしたらぜひノミネートされるべき作品です。
少年忍者とLil かんさいが主演で、次世代を担うジャニーズJr.たちが22名も出演しています。「東のジャニーズJr.」VS「西のジャニーズJr.」の構図でバトルするボーイスカウト映画。しかも『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』の川村泰祐監督と『下町ロケット』『半沢直樹』などのドラマを手がけた丑尾健太郎が脚本を担当し、完全オリジナル作品ということで新鮮な気持ちで映画に没入できます。今年はボーイスカウト日本連盟創立100周年でもあるそうで、これからボーイスカウトブームが来るかもしれません。ちなみに監督も偶然ボーイスカウト出身だったとか。リアルなボーイスカウトの活動が描かれていそうです。
東西ボーイスカウトと不良がもめてる町が舞台に
舞台は東京のはずれの虹色町。もともとは一つだったボーイスカウト団が、近隣で起こった強盗事件から街を守れ切れなかったことがきっかけで東と西に分裂してしまいます。東団は規律正しくストイックな雰囲気。軍隊のように行動しています。リーダーの龍一郎を演じるのは少年忍者の安嶋秀生。副リーダーの春太は内村颯太、 他に10人ほど少年忍者が団員役で登場。西軍は関西弁全開でフリーダムな雰囲気です。リーダーの虎之介を演じるのはLil かんさいの嶋﨑斗亜、副リーダーの猿川は大西風雅、強引にスカウトされた転校生、須藤宙は西村拓哉が演じています。西団は少数精鋭であとは2人の団員がいます。
この東西のバトルだけでは終わらず、不良グループも絡んできます。不良グループのリーダー、鷲尾を演じるのは檜山光成、元ボーイスカウトで今は不良の和馬は深田竜生が演じています。ボーイスカウトの制服だけでもかわいくて萌えるところに、悪そうなファッションの不良グループが入ってくることで、コントラストが生まれます。ボーイスカウト同士が争っているうえに不良グループまでいて、実際こんな街があったら治安悪すぎですが……全員かっこいいのでむしろ住みたくなってしまいます。
突然始まるダンスバトルに心つかまれまくり
街の治安を守っているのは、団員たちから慕われている元ボーイスカウトの警察官・五十嵐。演じているのはアミューズ所属で「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」出身の平岡祐太です。ジャニーズJr.たちがひしめく中、ジュノン出身でアミューズなんてどれだけアウェイだったか想像に難くありません。撮影時のインタビューによると、不良リーダー役の檜山がロケ弁を食べるのに夢中で平岡祐太が現場入りしたことに気付かず、あとで慌てて挨拶に行ったそうでした。事務所は違っても芸能界の先輩への礼儀を忘れないジャニーズJr.の礼節体質に感じ入るエピソード。不良のリーダー役というのもギャップ感があって良いです。
映画のストーリーに戻ると、転校生の須藤が地元を歩いているとボーイスカウト団の訓練風景に遭遇。「人々の規範になる」がモットーの意識高い系の東団の手旗信号はパキパキしていてCOOL。対する西団は、団員の人数を増やしたくて須藤に声をかけます。突然始まる東団と西団のダンス対決。それぞれのパフォーマンスがかっこよすぎです。さらに、「ボーイスカウトなんてやめちまえ~!」と不良グループまで乱入し、また歌と踊りを見せていました。この前半のパフォーマンスバトルで心をつかまれまくります。五十嵐警察官が「おい! お前たち! ケンカをするなと言ってるだろ!」と注意してやめさせていましたが、こんなケンカならいつまででも見ていたい……。ちなみに実演付き初日舞台挨拶では、映画上映前に生パフォーマンスが披露されたそうで、プラチナチケットを入手できた人は、Jr.のボーイスカウトによって心の火が起こされたことでしょう。
『僕らの七日間戦争』に匹敵する青春映画の名作
「ボーイスカウトでできた友情は一生の宝だ!」などとさわやかな笑顔で名言を放つ五十嵐警察官。試練を乗り越えることでチームの絆が強まります。あるとき東団が西団に挑戦状を送ってきて、「魔物のすみか」といういわくつきの荒れ果てた山奥の地にどちらが先に到達できるか対決することに。負けた方は廃団という過酷なバトルです。強盗事件で盗まれた宝石が隠されているという噂もあり、宝石をゲットしたい不良グループも参戦。それぞれのスキルを生かしてゴールに向かって進みます。休憩なしでストイックに突き進む東団。一方、西団も強引に入団させられた須藤が途中で脱走しようとしたらケガをしてしまう、といったトラブルに見舞われます。リーダーの虎之介が助けに行き、友情が芽生えるシーンでは胸が熱くなります。山中泊の夜、チームがバラバラでも空間を超えて歌で心がつながった少年たち。ストイックな東団リーダーが焚き火の横で舞い踊る姿もどこか神聖でした。少年たちの通過儀礼を見せてもらっているようです。少年たちの成長の通過儀礼といっても女子は一切出てこず、女性絡みで肉体的に大人になる、とかではないのが安心して観ていられるポイント。そして後半さらなる波乱と感動のシーンが……。個人的には『僕らの七日間戦争』に匹敵するような、青春映画の名作だと感じました。
ジャニーズJr.に人類の未来を託したい
実際に撮影風景はどんな感じだったのでしょう。「ザテレビジョン」や「anan」、松竹の公式サイトなどにインタビューが掲載されています。西団がトークしている場面は結構アドリブが入っているとのこと。リラックスしすぎて、寝ているシーンは本当に寝ていたとか。それを聞くとリピートしたくなります。撮影中は大量の虫が出現し、「足が細くて長い虫」を投げ合ったりしていたりしたそうです。また、電波も届かない山奥なのでトランプをやって遊んでいたというエピソードにも萌えます。無邪気な少年らしさがスクリーンからも伝わってきます。東と西のジャニーズJr.の今回のメンバーで一つの作品を作るということ自体が初めてだったそうで、映画の中だけでなく実際に友情が深まったのが素晴らしいです。
ボーイスカウトのテクニックは、実際にリアルのボーイスカウトの方々に丁寧に教えてもらったとか。「時計の針と太陽の位置を使って方角を確認する技」がためになると語った元ボーイスカウトの不良役・深田談。東団リーダー役の安嶋は「SOSのサインやロープの結び方」などを学んだとのこと。もし今後、天変地異や不測の事態に見舞われても、ジャニーズJr.の皆さんは映画で学んだ技でサバイバルできることでしょう。彼らに人類の未来を託していきたいです。
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辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)、「電車のおじさん」(小学館)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)など。