【性教育ワーク連載vol.9】無意識に「からだの通知表」を押し付けてない? 見た目についてのコメントで気を付けたいこと
親子の15分性教育ワーク。2回連続で見た目や体型の話、最近「ルッキズム」と言われているものについて考えてみましょう。
思春期は自分の評価に敏感になる時期。勉強、部活、恋愛など、色々なことを他人と比べて落ち込こむことがよくあります。精神的に不安定にもなりがちなこの時期に、他人から見た目についてアレコレ言われて、悩んだり、傷ついたりしたことはありませんか?
同級生から「デブ!」と馬鹿にされた。友達から「○○(タレントの名前を引き合いに出して)に似てる!ウケる!」とネタにされた。付き合っていた相手から、見た目、服装について、好みに変えるようにしつこく言われた。
親から、「もっとやせれば」「その顔だと派手な服は似合わない」なんて言われたことのある人もいるかもしれません。親的には「将来のために」「からかわれないように」と、子どもを心配しての発言だったかもしれませんが、言われた側にとっては見た目をけなされたのと一緒ですね。
逆に、見た目のことをほめられて、傷つく人もいます。
たとえば「胸、大きいね!」と言われて「自分はそこだけしか見られていないのか」と悩む人もいます。他にも「やせているね。ほんと、うらやましい」と言われて、「やっぱり、自分はやせてないとほめられないんだ」と考え、からだを壊すほどのダイエットをする人も(ダイエットについては、次回のワークで詳しく扱います)。
見た目をけなすことと、ほめることは、真逆の行為のようで、実は根っこの部分でつながっています。両方とも見た目のことを「これは悪い、これは良い」と評価しており、いわば「からだの通知表」を押し付けているようなもの。
子どもは「からだの通知表」を何度も押し付けられることで、「自分の見た目は良いのかな?悪いのかな?」「他人から、見た目をどう思われているのかな?」と考えるようになります。
見た目についての話題は、家族や友人との会話、ネット、テレビ、雑誌、マンガ、様々な場所で語られているので、「からだの通知表」を気にする機会はたくさんあります。そして人によって言っていることが全然違います。
たとえば「目」のことを考えただけでも、「一重で切れ長の目が最高!」という意見があれば、「二重でぱっちりなのが良い!」という意見もあり、全ての人間から「いいね!」と言われる見た目になることは不可能です。
こうして「からだの通知表」に振り回されていくと、自分のからだに自信を失ったり、傷ついたりしていきます。
色々と難しい点の多い見た目の話ですが、今回のワークを通して親子で一緒に、見た目を評価することの危うさみたいなものを感じ取ってもらえれば嬉しいです。
それではワークを始めましょう!
今回の15分ワークのお題
①他人の見た目のことをからかって楽しむ人がいる!?
②アイドルのことをほめたのに、落ち込む?なんで?
③「推しをほめちゃダメ?」「こどもが見た目に悩んでいたら?」よくある質問に答えます!
①他人の見た目のことをからかって楽しむ人がいる!?
子どもと一緒にイラストを見ながら、「チビって、からかわれている子はどんな様子かな」と聞いてみましょう。
子どもから「困っている顔をしている」「イヤそう」などの答えが返ってくると思います。「黙ってじっとしている」「怒っていないね」というのも大事な指摘です。
次は「からかっている子はどんな様子?」と質問します。
「楽しそう」「盛り上がっている」などの答えが来るかと思います。からかっている人が楽しんでいる様子であることが、ここの大事なポイントです。
そして、まとめとして伝えておきたいのはこちらです。
「チビとか、デブとか人の見た目のことをからかうのはダメなこと。でも、そんなダメなことをしていて盛り上がってしまうことがある。からかわれた方は、本当はイヤなのに、それが言えずに黙っていたり、一緒に楽しんでいる振りをしたりすることがあるよ。だから、どんなに楽しい雰囲気になっても、人の見た目のことをからかうのはダメだよ」
どんな状況でも、見た目のことをけなしてはいけないことを伝えられるといいですね。
②アイドルのことをほめたのに、落ち込む?なんで?
こちらもイラストを一緒に見ながら、子どもに質問してみてください。「イラストに「目が小さいとかわいくないのかな?」と元気の無い様子の子がいるね。なんでかな?」
子どもから「自分の目が細いことを気にしていたのかな」など、イラストの子の気持ちを推測する答えがある程度出てきたら、次へ進んでください。
「テレビとかネットに出ている人が見た目をほめられていることで、「自分はほめられている人とは違う。こんな自分はダメなんじゃ」と思い、落ち込む子がいるよ」「あと、自分自身がほめられた時に、『自分にはそこしか価値が無いんだ』と思ったりして、落ち込む人がいるよ」「だから、ほめる時は持ってうまれた身体や顔の特徴じゃなくて、髪型とか、洋服とか、その子が選んだものをほめられるといいね」
「ほめるのはいいこと」と思われがちですが、実は落とし穴があることを伝えられるといいですね。
③「推しをほめちゃダメ?」「こどもが見た目に悩んでいたら?」よくある質問に答えます!
「見た目」にまつわることで悩んでいる人は本当に多く、私たちもよく質問を受けます。そこから代表的な物をまとめました。自分と同じ悩みが見つかるかもしれません。
Q 推してるアイドルのことを「かわいい!」「かっこいい!」と言うのもダメ?
A 言っても大丈夫です!推しのことを「かわいい」「かっこいい」と思う理由は、だいたい見た目、振る舞い。歌唱力、ファンサービスなど総合的なものだと思います。
イラストにあったような「目がぱっちりでかわいい」みたく、特定のパーツを評価するような言葉で無ければ、OKです。
Q 子どもが見た目のことで悩んでいたら、どんな声がけをすればいい?
A まずは、悩んでいる理由について聞いてみてください。「同級生からブスと馬鹿にされた」「○○(アイドルなど)みたくなりたいのに、なれない」「周りのみんなと違う」など、理由を聞けると思います。
そして、今どんな気持ちなのかを聞いてみてください。
「わかるよ」「大変だったね」など声がけしながら気持ちを受け止めつつ、悩んでいる理由に沿って話をしていくといいと思います。
誰かが見た目をけなしてきたことで悩んでいるのなら、「人の見た目のことをアレコレ言ってくるのはダメだよね」と伝えるのがいいです。「私はあなたをステキだと思うよ」と話すのもいいと思います。この時、「ブスじゃないよね!」みたく、悪口を否定したくなりますが、これは避けた方がいいと思います。「ブスか、ブスじゃないか」という、その子の見た目を評価する話になり、見た目をけなしてきた人と同じ土俵にあがってしまうので気をつけて。
「○○(アイドルなど)みたくなりたい!」というように理想があって、そこに近づけないから悩んでいるのであれば、無理の無い方法で理想に近づけるか一緒に考えてみるのがいいと思います。ただ、過剰なダイエットなどに走る場合もあるので、そこは慎重に(ダイエットについては次回)。「周りのみんなと違う」という場合は、「顔とか、体型とかはひとそれぞれ違う」「正解はないよ」と伝えてみましょう。そのうえで、子どもが自分の見た目を変えたいのであれば、無理の無い方法を一緒に探すのもいいと思います。
Q 子どものことをほめられた時に、気恥ずかしさからつい「でも、うちの子はチビで~」みたく言ってしまいます。これってナシ?
A とりあえず私たちは、子どもがほめられた時は「そうなんです!」とか、「ありがとう!」と答えています。子どもが横で聞いている場合は、見た目をけなす行為につながるので絶対に避けたいです。子どもが横にいなくても、ほめられて嬉しい気持ちを前面に出しています(社交辞令っぽくてもやる)。謙遜の文化が根強いから、「身内サゲ」をしたくなる気持ちはわかるのですが、純粋にほめてくれたことを喜んだり、感謝したりしてもいいかな、と個人的には思っています。
おつかれさまでした!
次回は、思春期から気を付けたい「ダイエット」の話です。
〈次回へつづく〉
イラスト/ばばめぐみ ※イラストは12月28日発売の書籍「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」(ほるぷ出版)から抜粋
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アクロストン
妻・夫であり、12歳、10歳の子を育てる親でもある、医師2人による性教育コンテンツ制作ユニット。
公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。
家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。
著書:「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」 (ほるぷ出版)、「3~9歳ではじめるアクロストン式 『赤ちゃんってどうやってできるの?』」、「いま、子どもに伝えたい性のQ&A 、思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(ともに主婦の友社)
監修:シールでぺたぺた「おうちせいきょういくえほん」(主婦の友社)