結婚を考えているカップルが「2人で観てはいけない映画」4選
結婚を考えているアラサー世代に向けて、「パートナーと二人で見てはいけない」映画を4本紹介します。本当は、どれもすべて良作なのですが、結婚を考えたカップルが見ると、結婚欲自体が下がってしまう可能性が高いので、もし鑑賞する際にはご注意を。
アラサー女子にオススメで自己啓発できる名作や、デート映画を映画ソムリエであるライターが厳選しているので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
1.『アイズ・ワイド・シャット』
159分という長い、嫉妬やセックスにまみれたストーリー…
日本では無修正版で公開され、R-18に指定されている、『アイズ・ワイド・シャット』。ニューヨークに暮らすなに不自由ない夫婦の性をテーマに、妻への嫉妬と自らの性衝動の狭間で苦悩していく男を描いた映画です。撮影当時実際に夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンを主演に迎え、実際にも夫婦である2人の濃密ラブシーンは大変話題になりました。嫁が他の男性とまぐわっていることを想像して、嫉妬に燃えたりしていていますが、基本的に登場人物は苦悩していてつらそうです。
この作品は撮影期間が18カ月、編集に1年。ギネスブックにも「撮影期間最長の映画」という部門で認定されており、とにかく完成までに時間を要しました。トム・クルーズの撮影タイミングでトムが家をあけすぎたこともあり、それが結果的にはニコール・キッドマンの逆鱗に触れ、離婚につながったのではと一部では囁かれています。夫婦間で「この映画の撮影は一体いつ終わるのか」を何度か話し合ったそうで、本作公開から2年後、離婚しました。159分というかなり長い上映時間、嫉妬やセックスにまみれたストーリーというだけではなく、なんだか全体的にいわくつきな感じで運気が奪い取られそうな気配もあり、結婚を考えるカップルにおすすめにしにくいです。ストーリーは刺激的なので、倦怠期のカップルには良いかもしれません。
なにはともわれ、『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』など数々の名作を残した天才スタンリー・キューブリックの遺作。どこかで鑑賞しておいても、損はないはず。
2.『マチネの終わりに』
結婚生活自体の難しさがリアルに描かれているもので…
東京、パリ、ニューヨークを舞台に音楽家とジャーナリストの愛の物語を描いた芥川賞作家・平野啓一郎。同名のベストセラー小説を福山雅治、石田ゆり子主演で映画化した大人のラブストーリーです。ライターが10代の頃ではおそらくこの映画の魅力には気づけなかったであろう、お互いの相性だけではどうにもならない環境やタイミングが影響していくことを身に染みさせる大人の恋愛映画です。
とはいえ“ミドル世代に突入していく自分がこれからどう生きるか”についても同時に深く考えさせられる作品。恋愛映画と言うジャンルを越えて、過去と未来をどう受けとめて、これからどう生きていくかというテーマに触れることができます。大人になった時にこれまでの生き方を振り返り、自分の存在理由を問いただそうとしたことがある人は、痛いほどに刺さります。
しかし一方で、ラブストーリーはとても切ないし、結婚生活自体の難しさがリアルに描かれていたり、プラスアルファで表では見せない女の心理的な怖さみたいなものが描かれています。なので、結婚前にしたカップルにはおすすめしたくありません。
しかしどんな場所にいても、絵になる福山雅治の魅力、フランス語にも挑戦した石田ゆり子の歳を重ねるごとに増していく愛らしさ。演者たちの魅力もあふれんばかりです。この作品ではじめてクラシックギターの挑戦した福山雅治は、色気と言う名の音色を奏でています。ギターの音色で心地よく、これまでの自分の人生を振り返ってみたくもなるので、1人の夜、お酒を片手に鑑賞したい映画です。
3.『ミスター・アンド・ミセス・スミス』
現在離婚調停中の2人が主演、今見ると切ない気持ちに…
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが夫婦役で共演するアクション・エンターテインメント。2人は後に結婚。世界一有名な夫婦のひと組になるも現在は、ご存知の通り、離婚調停中です。今もこの1組の男女の動向を世界中のパパラッチたちは追っていますよね。
あらすじはシンプル。一見ありふれた夫婦のスミス夫妻。しかし実は2人ともプロの殺し屋です。お互いに隠してきた素性がばれ、結婚生活が壮絶なバトルに一転…!?ナイフ飛び交うキッチンでのアクションは名シーンです。絵になる2人がお互いの正体を知ってからの血で血を争うような夫婦喧嘩をして、そこからの仲直りのイチャイチャアクション。これがコメディタッチで進行するので、面白くないわけないのですが。いかんせん2016年の離婚申請から5年。2人の親権を巡る裁判は今も続いており、映画でもプライベートでも激しく愛し合ったぶんだけそれ以上に現実で争う2人の姿がチラつき、いまいま見返したら少々切なくなりました。
個人的にはアンジェリーナ・ジョリーという女性のスタイルのよさがとにかく際立った作品ですので個人的にはダイエットやシェイプアップしたいハートに効く作品だと認識しています。「目は口ほどに物を言う」とは言いますが、この映画でのブラピのアンジーを見つめる瞳をごらんください。”惚れた女を見つめる男”ってこんな顔をするんだ…の見本みたいな顔をしています。
全方位メロメロなのが伝わってきて、作品に罪はないですが、より切ない。いま結婚を考えるカップルがみると兎にも角にも一抹の寂しさを誘うことは避けられません。
4.『オアシス』
「こんなに誰かを愛するなんて無理だ」と諦めモードが漂うかも…
こんなに強い絆で結ばれた男女をみたことがありません。正直、これを超える作品には出会えないのではないかと、はじめて鑑賞したときは思ってしまったほど、強熱な愛に出会える作品です。前科三犯の男が、出所後に自分がひき逃げした被害者の家族に謝罪に行き、重度脳性麻痺の女性と出会います。2人は秘かに愛を育んでいくが、周りはそれを許しません。社会にうまくなじめず、これまで生きてきた2人はただひたすらにまっすぐに気持ちをぶつけ合うことで、お互いをいつしか想い合うようになっていきます。ここで特筆したいのがこの2人の間の絆。
破壊的なほどに真正面からお互いと向き合う。言葉にすると安っぽくすらなってしまうので、とにかく「観てください」としか言いようがないですが、強い引力で対峙しているふたりをみていると、どうにもこうにも自分たちの愛がちっぽけに思わざるをえない可能性があります。「こんなに誰かを愛するなんて無理だ」と諦めモードが漂う可能性も…。
タイトル通り、主人公の男女に間にあるもの、まさにオアシス、パーフェクトな聖域です。だから、入り込めない。また女優のムン・ソリさんが演じる、重度の脳性麻痺という難しい役の圧倒的な演技力にも脱帽。力強い映画なので、1人の夜にこのオアシスにそっと足を踏み入れてみてほしいのです。
いかがでしたか?「結婚を考えたカップルが見てはいけない映画」を映画ソムリエ・東紗友美がお届けしました。映画デートは感想をシェアすることで、お互いの価値観を理解できる素敵な時間なので、誤った選択をせずに、皆さんが素敵な映画時間を過ごせることを願っています。
今回の記事「大人女子のための映画塾」を執筆したのは…
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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Instagram:@higashisayumi