夫と2人きりになる未来が楽しいと思えなくなって。『離婚約、してみました。』著者・のらりくららさんインタビュー
子育てが一段落してからも、人生があと50年残されているかもしれない今の時代、浮気などの決定的な理由がなくても、夫婦を終えて新しいライフデザインを描くことも選択肢。「離婚約」や「卒婚」なら、法律ではまかないきれないその思いを、円満に叶えられるかもしれません。今回は〝のらりくららさん〟にお話をお聞きしました。
「夫と2人きりになる未来が楽しいと思えなくなっていました。第二の人生は自由な私でいたい」
──『離婚約、してみました。』著者・のらりくららさん
女性の幸せ研究家 のらりくららさん・40歳 フリーライター、イメージコンサルタントも手がける。夫48歳商社勤務、長女14歳。子育てでは最高のパートナーながら、夫婦としては数年前から疑問を感じ、3年前、夫婦で話し合いに。現在は1年半後の離婚を見据え、離婚約中。
のらりくららさんの離婚約
・離婚は話し合いから3年後(子供の高校入学が目処)
・娘の親権、養育費は夫
・共有資産のマンションには夫と娘が住む
・マンションの価値相当額の現金を夫から分割で受け取る
・夫の退職金は夫
・離婚約中の恋愛はあからさまにしない
○きっかけは「娘が進学したらどうするの?」のひとこと
○離婚をすると思えば、ダメな部分を冷静に話し合える不思議
○とはいえ離婚をやめることも!?それが幸せと思えたときは
きっかけは最初の自粛期間中。娘は中学1年生になり、夫婦はお互いに好きな仕事に没頭、会話もさほどなかった私たちが家で過ごす時間が増えたことでした。娘が希望する全寮制高校に進学したら週末も夫婦2人。ふと「子どもが入学したら、その後の私たちどうする?」と聞いてみたら、「卒業でいいんじゃない? お互い頑張ったし、子どもも立派に育ったから解散でいいと思う」とあっさりした答えが返ってきました。正直面食らいましたが夫も同じ気持ちだったことがスッと腑に落ち、悶々と考えてきた「離婚」に、一気に現実味が増しました。子育てでは頼れるパートナーでも、夫婦としてはそっけない夫にいつしか話しかけることもしなくなり、日常の些細なことで生理的に嫌だと思う部分も増えて、生涯一緒の未来は描けなくなっていました。そんなわけで、私の場合は「離婚約しませんか?」と切り出したのではなく、離婚に適したタイミングが3年後の娘の高校入学、それまでにお互い自立した生活ができるように話し合いや準備を始めた結果、「ただいま、離婚約中」という状態です。
この先の山場はきっと、公正証書を作成するとき
親権は、財産分与は…… 最初から詰めすぎない
3年後の離婚を決めた日、親権にも話は及びました。「もらえるなら喜んで僕が持ちたい」と言った夫には少々驚きましたが、承諾しました。もちろん喜んで、ではないですが、彼の人間性や私と娘の関係なら、親権を理由に私をしいたげはしないと思えたことと、父娘も仲が良く、夫が“父”を継続することが彼のアイデンティティなのだと感じたからです。その後タイミングをみて娘に話したところ、「ママも一緒に集合できるこの家があれば、家族としては変わらないよね」と理解を示してくれたので、マンションは残すことに。離婚時の評価額からローンを引いた、半分を分割で私が受け取る予定です。夫の退職金についても聞いたときは「そこまで要求する?」と不穏な空気が流れたので一旦保留。結婚年数分は共有財産という考えもありますが、定年はまだ先。「離婚後に発生したお金まで要求すると嫌がると思う」というアドバイスを受け、まだ詰めていません。離婚約をしながらも3年は一緒に過ごすので、ギスギスしたくないし、即離婚! となって金銭的な準備期間が減って困るのは私。今の口約束はいずれ公正証書など法的に通用する文書にするのでしょうが、それまではお互いの良識で課題を解決するつもり。夫は人間的にそれができるという信頼が今はあります。
弁護士を立てて、ファイティングモードにしない 信頼関係の下に、お互いの顔色を見ながら
別れを見据えると 日々がうまくいく不思議
離婚をするかもしれないと思ったら、夫婦として何が違ったかも素直に聞けました。“お金の価値観”だそうです。「俺はお金を使わないことを、君はお金を使うことばかりを考えている」と。意外だったし、正直イラッともしました。娘の私立の学費100 万×9年間は私が払ってきたし、自分の欲しいものは自分で買っていたけれど、その使い方が彼からは荒く見えたのでしょうね。私の方は前述した通りですが、離婚が前提だと、あの時はもっと話し合えばよかったなとか、感謝が足りていなかったなと、自分のことも冷静に見つめ直せます。夫の嫌だと思う部分も我慢できたり、一緒の外出も楽しめるようになりました。これまで取材した離婚約経験者のみなさんが言う、離婚までのカウントダウンの日々の方が以前よりうまくいくというのは、我が家も例外ではありません。
離婚約にルールなし ヨリを戻して幸せになることも
周りの反応はというと、「離婚約を知っていたら、あんなにイガミ合わずにできたかも」と言う離婚経験者もいれば、「このご時世にフリーランスのくららがわざわざ離婚するなんて危険」「甘い」と言われることも。確かに満足な一人暮らしのシミュレーションをしたら過酷な現実をつきつけられ、一度だけ「離婚約やめるのあり?」と聞いてみたことがありますが、夫の気持ちは今のところ揺らぐ気配なし。ショックでしたが準備を頑張る気になりました。ただ取材した中には、離婚約したことでわだかまりが解け、離婚をやめたご夫婦もいます。離婚約は、その期間でどう生きたいかを考える猶予みたいなもの。私の場合は、「卒婚」は籍を抜かない分リスクは低いけれど、自由ではないような気がするので、今は「離婚」希望。再婚はしなくてもいいけれど、お金で安心できるとか、1人が寂しいからではなく、2人の方が楽しいと思える人ができたら、パートナーになりたい。留学の夢もあります。いくつになっても幸せを感じられる環境を大事にしたい。それが最終的に卒婚や夫婦を続けること、と思い直す可能性もあります。離婚約や卒婚、もちろん離婚も推奨するわけではないですが、これらを“ネガティブ”と捉える時代では、もうないはず。どう生きたいかを立ち止まって考える時間は、結果はどうであれ「前向きな門出」につながると思います。
離婚約時代到来!? きっかけや結果は人それぞれ
【右】著者の他にも様々なパターンの離婚約エピソードが集められ、離婚約のバイブルに。『離婚約、してみました』(光文社) 【左】〝離婚約〟というワードを世に出した元祖はお笑い芸人・じゃいさん。現在、離婚見直し中だとか。『離婚約』(双葉社)
撮影/五十嵐 洋 取材/鍋嶋まどか スタイリング協力/安西こずえ ※情報は2022年3月号掲載時のものです。
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