申真衣さん「私がVERYの表紙になってガッカリしている人もいるかもしれない」
多様化する価値観の中で、「結婚したら幸せ」「この服を着ていればOK」といったわかりやすい定義はないことが前提の世の中。前編に続き、コラムニストのジェーン・スーさんとVERY専属モデルの申真衣さんのお二人に今の時代をサバイブする方法を聞きました。(全4回。前回はこちら)
多様性の時代、「読者に正解を示す」雑誌はもういらない?
申真衣さん(以下、申):ちょっと質問してもいいですか? 女性誌って今まで「読者に正解を提示してあげる」という役割を担ってたじゃないですか。「こうするとモテる」とか、「オフィスでは、こういう恰好がふさわしい」みたいな。それってある意味、自分の選択に自信が持てないから正解を提示されたいというニーズがあったんだと思うんですけど、今は読者も多様化しているし、全員に対しての正解もないし。女性誌が果たす役割って、どう再定義したらいいのでしょう。
ジェーン・スー(以下、スー):これはエッセイの中でも書いたのですが、私たちまでの世代の価値観は、雑誌に載っていた新色でしっかりメイクして、ブランドの服を着ていればいいという感じだったんですよ。でも“抜け感”とか“こなれ感”とかそういうニュアンス的なところまで言われはじめて、雑誌に言われる通りにすればどうにかなるということに整合性がとれなくなっちゃったんですよね。「自分らしさ」というのは、おしゃれが好きな人や個性を大切にする人はすでに見つけているかもしれませんが、そういうことにリソースを割かず、人から言われたことだけやっていた人はこの先ツライ。自分に似合う物とか本当に好きな物って、ぼーっと生きてたら、絶対わからないので。私たちみんな、前人未到の地でとんでもないブートキャンプに突然送り込まれた状態なんですよ。
申:ここだけの話、私はVERYのカバーモデルをやっていますけど、今までのVERYの印象とは違ってしまったとガッカリする人も、もしかしたらいるかもしれませんよね。表紙に出ているからといって、私のような生き方だけがVERY的な「正解」というわけではないと思うし、いろいろな選択肢がある時代のはずだけれど、それをどう伝えたらいいか難しさも感じているんです。
スー:全方位的に誰からも好かれようとするのはまあ無理だから。だからこそVERYにもいろんなキャラクターのモデルさんがいるわけだし。私のポッドキャスト番組、『OVER THE SUN』は、東京で生まれて育って、独身で好き勝手やってる私と、秋田出身で、大学のときに単身上京して、20代前半で結婚して子どももいる堀井美香アナウンサーの二人でやっています。全く違う生き方をしてきた二人が50歳近くなって、一緒にゲラゲラ笑ってバカみたいな話をしているだけなんだけど、おかげさまでたくさんの人に聞いてもらえるようになりました。私だけでも、堀井さんだけでもだめで、自分とは違う人の話だけだと苦しくなっちゃう人もいる。タイプの違う両方がいることが大事で、考え方も立場も違う、けれどもお互いのことを認め合う。それがシスターフッドということじゃないのかな、と最近思うんですよ。
「選ばなかったほうの道」がまぶしく見えるとき
申:独身時代、学校や会社に行っていた頃は自分に似た立場の人が周囲に多かったけれど、子どもを介すると出会える人の幅が広がるなと。それは良いことですが、違う立場の人と自分を比べてしまうこともあると思います。働く、働かない。どれくらい働く。保育園か幼稚園か、みたいな感じで今は選択肢が多いですよね。だから育児中って自分は人と比べてどうなのか。今の自分でいいのかと、つい考えてしまうことが多いと思います。
スー:人と比べて悩んでへこむことが多い人は、アイロンでプリーツを元通りにするみたいに「よれたら、かける、よれたら、かける」を習慣にするのがいいかもしれない。「私は、できる、私は、できる」と自分に呪文をかけて自信を回復させていくしかないですよ。折り目をつけるというか。ほっとくとすぐ元に戻っちゃうからね。
申:それ、なんかすごくいい方法ですね。
スー: 20代の終わりから30代は、そうやって情緒がブレブレになっても自分の脛をビール瓶で叩いて起き上がるような生き方をしていて、お前はグリーンベレーの軍人か? というほどにメンタルを鍛えて40代を迎えたつもりでした。ところが最近は更年期障害の始まりなのか、情緒が不安定になって、わけもなく悲しくて仕方ない、みたいな瞬間がたびたび訪れるようになりました。でも「来たー! これ、懐かしいやつだ」という気分で出迎えています。メソメソ泣きながら突っ伏して寝ていた14歳の頃みたい(笑)。
離婚、再婚、ステップファミリー。自分で選べる人生が一番いい
申:思春期のあの感じがまた出てくるんですか。結局、我々は、ホルモンに支配されているんですね。
スー:まぁ、別にずっと続くわけじゃないんですよ。すごく体調の悪い日も多いけれどいい日もある。今すごく仕事が忙しいのですが、先輩たちに聞くと50代になったら楽になるらしいから、それじゃあ気長に待つか、という心境です。前は40代になったら楽になるって聞いていたのにな 。40代になっても何が起きるかわかりません。独身チームの友だちとは、これからもし結婚したら、なんて冗談まじりに仮定の話をしています。中学生くらいの子どものいる人と結婚して、突然「これから高校受験で大変よ~」とか言ってチートしようよ、なんて(笑)。
申:そういうこともこれから増えそうですよね。離婚してもいいし、子どもがいる人と再婚してステップファミリーになってもいい。いろいろな選択が選べるのが一番いいですよね。
スー:増えると思います。ラジオで話をしていても離婚の話はめちゃくちゃ多いです。いいことですよ。女の人が自分の人生を選択できるようになったってことですから。そうそう、選択肢がないのと「正解」を一個だけにされるのがいちばんキツイからね。
Profile
ジェーン・スーさん
1973年、東京生まれ東京育ち。作詞家、コラムニスト。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとしても活躍。
申真衣(シンマイ)さん
1984年生まれ。大阪府出身。VERY専属モデル。株式会社GENDA代表取締役社長。
『きれいになりたい気がしてきた』
『美ST』連載が待望の書籍化!“効かせ甲斐のあるお年頃”を迎えて改めて考える、美の楽しみ方と向き合い方とは。「どうせ生きるなら、好きな自分で生きていきたい」「誰に遠慮する人生じゃなし、自分のための美ですもの」「四十代も終わりかけになって、ようやく女が楽しくなってきた」。これから40代を迎える方も、いままさに同年代という方も、お年頃セカンドシーズンが楽しくなるエッセイ44本!(光文社刊)
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ウノアエレ ジャパン 0120-009-488
フラッパーズ 03-5456-6866
ティッカ http://ticca.jp/
撮影/イマキイレカオリ(ジェーン・スーさん分) 西崎博哉<MOUSTACHE>【申真衣さん分】 取材・文/髙田翔子 スタイリング/村瀬萌子(ジェーン・スーさん分)
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