【漢字】「追従=ついじゅう」は間違い!実は読めない漢字3選|CLASSY.

二種類の音読みで読める熟語があります。たとえば、「重複」は「ジュウフク」とも「チョウフク」とも読めます。「重」を「ジュウ」と音読みするのは「漢音」、「チョウ」と読むのは「呉音」です。もともとは、「チョウフク」と読んでいましたが、「ジュウフク」と読む人が増えると、これが「慣用読み」として認知され、どちらも間違いでないとされるようになりました。しかし、意味や使い方によって「漢音」(遣隋使や遣唐使によってもたらされた中国の都長安の発音)と「呉音」(それより以前にもたらされていた中国の南の地方の音)を読み分けている熟語もまだあります。今回は、そうしたものを取り上げます。

1.「追従」

最初は「追従」です。「彼は他人

最初は「追従」です。「彼は他人の意見に追従してばかりいる」などで使います。この「従」は、この字を含む多くの熟語がそうであるように「ジュウ」と読むので、ここでは「ツイジュウ」と読みます。ちなみにこの「ジュウ」は「慣用音」と言って、「呉音・漢音には属さないが日本で一般に通用するようになった音」のことです。

それでは、「彼女は上司ではいつも追従笑いを浮かべている」に使われている「追従」は、何と読むでしょうか?

正解は「ツイショウ」です。「人にこびへつらうこと。おべっかを使うこと」の意味の場合は、「追従」の「ショウ」を「漢音」の「ショウ」で読みますので、「ツイショウ」となります。
現在は、「従事」「従業員」「服従」のように「ジュウ」と読むほうが優勢ですが、「従容として(「ゆったりと」の意)死に赴く」などと使う際の「従容」では「従」は「ショウ」と読み、これが「漢音」です。また、かつて官位を表わす際に使った「従三位」の「従」は「ジュ」と読み、これは「呉音」です。実は、常用漢字表には、「従」の音読みとして、この「ジュウ・ショウ・ジュ」の3つがしっかり示されています。

2.「疫病」

次は「疫病」です。「疫病の退散

次は「疫病」です。「疫病の退散を願う」と使う「疫病」は、広く「悪性の伝染病」を指す言葉で、コロナ禍の昨今、よく目にする言葉となってしまいましたが、この常用漢字「疫」は「エキ」(「漢音」です)と読みますので、普通は「エキビョウ」と読みます(古くは「ヤクビョウ」と読みましたので、そう読んでも間違いではありません)。

それでは、「疫病神にとりつかれたのか、災難続きだ」と使う「疫病」は、さて、何と読むでしょうか?

正解は「ヤクビョウ」です。いわゆる「不幸をもたらす神様」の意味である「疫病神」の場合は、「呉音」「ヤク」と読みます。ところで、「疫病神」は、厳密には仏教の神様ではありませんが、「呉音」で読む言葉には「仏教関連」の言葉が多いことをご存じですか?それは、仏教が日本に伝わったのは、「漢音」が伝わる前の時代であるため、「仏教用語」はその当時の「呉音」が定着してしまい、後から入ってきた「漢音」の影響を受けることが少なかったと考えられます。常用漢字表には、「疫」の音読みとして、「エキ・ヤク」の二つとも示されます。なお、「厄病神」と表記されるものも見かけますが、こちらは「病気以外の不幸」のニュアンスがあるというだけで、「身にふりかかる不幸」の意味は同じです。

3.「開眼」

最後は「開眼」です。「新しい大

最後は「開眼」です。「新しい大仏の開眼供養を行う」の「開眼」は何と読むでしょうか

「カイガン」と「カイゲン」と2つで迷いそうですが、この文脈では「カイゲン」が正解です。
常用漢字「眼」は、「ガン」と「ゲン」の二つの音読みが常用漢字表に示されますが、このうち「ガン」が「呉音」で、「ゲン」が「漢音」です。前問でも触れましたが、「仏教関連の言葉は呉音読みが多い」ということです。冒頭の例文中の「供養」も漢音「キョウ」と読まずに、呉音「ク」と読んでいるのも、「仏教用語」です。したがって、「仏教関連」ではない場合の「開眼」は「カイガン」と読みます。たとえば、「野球選手がバッティングに開眼した」「開眼手術を行う」という使われ方の場合が、これにあたります。

いかがでしたか?全く同じ漢字を使っていても読み方が違うというのは、ずいぶんと面倒な気がするかもしれませんが、そうした使い分けが残っているのは、むしろ「意味によって読み方を変えるということが当たり前だった、日本語の歴史を今に伝えている」ということかもしれません。では、今回はこのへんで。

《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「難読漢字の奥義書」(草思社)

文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)