バレンタインデーに「観ないほうがいい映画」4選【理由はいろいろありますが…】
今回は、「バレンタインの時期には観てはいけない映画」を4本紹介します。ハッキリ言うと、どれもすべて良作ですが、自分の置かれた状況においてはバレンタインにテンションが下がってしまう可能性が高いので、もし鑑賞する際にはご注意を。アラサー女子にオススメで自己啓発できる名作や、デート映画を映画ソムリエであるライターが厳選しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
1. 『ザ・スイッチ』
付き合いたての彼とのデートには不向きです
去年、私が試写室でもっとも笑った映画かもしれません。ですが、初デートでみると事故につながる可能性があります。気弱な美人女子高生と超サイコな手口で人を殺める、連続殺人鬼の体が入れ替わってしまうホラー映画『ザ・スイッチ』。24時間以内にこの入れ替わりを解かなければ、永遠におっさん殺人鬼の姿で生きることになる女子高生が、自分の体を取り戻すべく友人たちと奔走します。
ホラー版『君の名は。』と一部で囁かれましたが、正直あんな美しいものではありません(笑) なんといってもグロ要素がマシマシでありつつ爆笑シーンの連続です。中年サイコパス殺人鬼おじさんと美少女の体が入れ替わるので、おじさんが恋する乙女指数100点の演技をするわけですが、正直、爆笑しかありませんでした。おじさんの“恋は盲目”的演技、メイク崩れ必須の爆笑です。
反対に、美人JKの容赦ない殺人っぷり…。グロさは手加減知らずでR-15指定です。笑ったりグロさに怯えすぎたり、感情が迷子になりがちなのでお互いのことを理解しきった、素を出せる彼とのバレンタインデートならば、おすすめできるかもしれません。付き合いたての彼とのデートには向かない気がします。
中年殺人鬼の美人JKを演じたキャスリン・ニュートンはAmazonプライムの人気作品『明日への地図を探して』という映画の主役。こちらはどんなシチュエーションのデートにもおすすめな、タイムトラベル系の良作なので、ギャップ演技の彼女が気になるようでしたらぜひ観てみてください。
2. 『きみに読む物語』
好きな人すらいない人が見ると寂しくなる映画
「私はどこにでもいる、平凡な思想の平凡な男だ。平凡な人生を歩み、名を残すこともなくじきに忘れ去られる。でも一つだけ、誰にも負けなかったことがある。命懸けで、ある人を愛した。私にはそれで十分だ」
こんなグッと来るセリフあるでしょうか…。しかも、これは冒頭のセリフです。究極の愛のかたちを描いた『きみに読む物語』は、もはや語り尽くされた感動の愛の名作。
療養施設で暮らす初老の女性は記憶を失っていたが、ひとりの男性が彼女を訪れて、ある物語を彼女に読んで聞かせます。それは1940年代のアメリカ南部の町で良家の子女と地元の貧しい青年の間に生まれた純愛の物語。1940年代の夏、田舎町を訪れた良家の令嬢アリーと地元の青年ノアが情熱的な恋に落ちますが、アリーの親は2人の交際を認めず、彼女は別の男性と結婚。やがてアリーとノアは運命的な再会を果たすのですが…いわゆる身分差恋愛・格差恋愛のお話です。
ちなみに「予告編だけで号泣する映画」としても名高く、30秒で涙活が可能な稀有な作品ですが、全編見てほしいのが本音です。この究極の純愛には「これほど愛されたら、なんて幸せなんだろう…愛以外、もはや何もいらないのでは?」とまで、思わせる強い力があるんです。愛されたくて仕方のない衝動に駆られてしまい、この映画は違う意味でも泣きたくなるので、好きな人すらいない、恋をしていない、そんな人はこの映画を絶対にバレンタインに観ないでください。
主人公は『ブルーバレンタイン』や『ラ・ラ・ランド』でも主演を務めたライアン・ゴズリング、ヒロインは『きみへの誓い』や『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』のレイチェル・マクアダムス。ちなみにこの2人は本作がきっかけで一時期、交際していました。のちに愛し合うことになった2人の演技ですから、かなり感情移入できますよ!無駄にリアルです。好感度高めかつ爽やか指数高めの2人の名演により、余計に恋したい欲が脳内を支配してしまうはず。愛の奇跡に触れて癒やされる不朽の名作なので、好きな人ができた時には、ぜひ観てくださいね。
3.『ずっと独身でいるつもり』
彼と結婚を意識したい時期には微妙な空気になる可能性!?
タイトルから「俺、もしかして結婚を迫られるんじゃ?」と男性をヒヤヒヤさせがちのバレンタインに向かないフラグがよぎりますが、違った意味でデートには向かない映画である気がします。おかざき真里原作の漫画で、監督はふくだももこ、主演は田中みな実さん。華やかな都会で生きる女性たちの孤独や寂しさ、そして希望を描き、都会で暮らす立場の異なる4人の女性たちが自分の力を信じて、強い一歩を踏み出す物語です。
この映画は、女の人生における最高の応援歌であり、自分の人生を一段と頑張りたくなるし、生きづらさを抱えた女性たちを救う賛歌のような物語。主演の田中みな実さんがリハーサル前に涙をこぼし、撮影前には謎の高熱に見舞われたというクライマックスの長セリフの独白シーンは、涙が出るほど素晴らしい。ここはリピートするたび、強くなれるエールのようですが、彼との恋愛のステップを更新中のバレンタインデートには向かない気がします。登場人物のとある決断は「あれ?俺、いらないんじゃ?」と誤解を受け、微妙な空気になる可能性があります。
アラサーになると「結婚いつ?まだ?」という質問から1度も逃れずに生きることは不可避ですが、無論私たちは結婚と結婚するわけではありません。時期に焦ることなく、結婚は本当に好きな人とするのがいいはずですし、「結婚=幸せ」ではないという力強いメッセージを受け取れるからこそ、距離を縮めたいバレンタイン、結婚を意識したい彼とは向かないかもしれませんね。
4. 『シェルブールの雨傘』
過去の恋をタンスから引っ張り出し、今の幸せが揺らぐ可能性が…
語るまでもないほどの不朽の名作『シェルブールの雨傘』は、結婚している2人には向かないと思います。フランスの港町シェルブールを舞台に、自動車修理工の青年と傘屋の娘が恋に落ちて結婚の約束をしますが、戦争が2人を引き裂いていきます。運命的な出会いとすれ違いをテーマにした恋愛映画で、手に入らなかったものにしか宿らない、甘美な感情が存在することを学んだという人の数はつゆ知らず…。今が幸せにも関わらず、かつての恋や元恋人など、人生で経験した未消化の恋をわざわざタンスから引っぱり出す感覚で思い出してしまう可能性が潜んでいます。わざわざ旦那(彼)とバレンタインに観る必要もない気がします。あとミュージカル映画を好きではない男性にとっても、おそらくしんどい予感。というのも、本作はセリフだけの部分が全くなく、セリフのすべてを歌にしたという完全なミュージカル。物語の冒頭から誰1人、セリフを発さず全て歌で表現します。しかもその歌の数々は、全世界でヒットし、アカデミー賞では作曲賞・歌曲賞にノミネートされ、しかもピアノジャズの旋律!眠くなるフラグがビンビンです…。彼(旦那)が名作を堪能してる隣で寝ていたら、イライラしてしまうかもしれません。
見どころは、当時20歳で、今も生きるフランス映画界のミューズであるカトリーヌ・ドヌーヴの若かりし頃の神レベルの美貌!ファッションの愛らしさはオシャレ欲を刺激してくれるし、髪型もダウンスタイルにアップスタイルがコロコロ変わりますが、お洒落欲が増すので女子会やファッションを楽しみたい日の前日に堪能していただきたいです。
いかがでしたでしょうか?年に1度のバレンタインをロマンティックな時間にするためにも映画のチョイスは気をつけてくださいね!
今回の記事「大人女子のための映画塾」を執筆したのは…
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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Instagram:@higashisayumi