【NEWSな言葉】脱炭素

日本でも「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という方針を表明するなど、脱炭素への取り組みは今後さらに本格化しそうです。脱炭素社会を実現する取り組みをしていくことで、私たちの暮らしにはどのような変化があるのでしょうか?

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脱炭素とは?

地球温暖化の原因となる、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにすること。

脱炭素のためにできることは?

①再生可能エネルギーや自然エネルギーの利用を進める
②省エネ対策をする
③公共交通機関を利用する
④ゴミを減らしリサイクルを進める など

崔 真淑さんが考える「脱炭素でどんなことが起きる?」

■持続可能な社会のための新しい技術開発が進む
■脱炭素に取り組む企業が評価されるなど新たな価値観が生まれる
■今までにないビジネスが生まれる可能性も

原油価格の高騰は脱炭素と関係がある?

最近、ガソリン代や電気代の上昇が話題になっています。これは原油価格の高騰が原因で、原油需要がピークになる冬を越え、2022年春までこの高騰は続くと見られています。なぜ原油価格が高騰しているかというと、コロナ禍のあとに少しずつ各国の経済活動が再開し始めていることもありますが、実は脱炭素ムーブメントが大きく影響しています。

今は脱炭素推進のために、風力などクリーンエネルギーが拡大する一方、二酸化炭素を多く排出する原油エネルギーの活用が縮小しています。こうした流れから、多くの原油生産企業は、設備投資をして原油の供給量を増やしても投資金額を回収できない可能性があると予測。足元で原油の需要が増えても、原油供給量を増やすことに消極的になり、需要と供給にミスマッチが続くことで、原油価格が高止まりしそうなのです。

脱炭素が新しい技術やビジネス拡大の契機に

しかし、暗い話ばかりではありません! 日本は二度のオイルショックを経験したことで、世界屈指の省エネ技術を開発してきました。今回の原油価格の高騰も新しい脱炭素技術を開発する契機になる可能性があります。実際、あるベンチャー企業は日本は海に囲まれていることを生かして、「波」からの発電技術を開発しています。

別のベンチャー企業も二酸化炭素を手軽に算出できるツールを開発するなど、影響はエネルギー業界にとどまりません。今や、脱炭素が一つのブランドであり、複数の脱炭素技術がパッケージ化され価値を高めることも。このように、脱炭素は、さまざまな業界に影響を与えています。

また世界に目を向けても、いろいろな脱炭素技術の商品ブランドや企業理念が評価されています。その代表格としては、自動車メーカーのテスラがあります。脱炭素などの環境規制の強化を追い風に、EV車ブームを牽引し、勢いを増しています。

脱炭素技術の進展は、短期的にうれしくない影響がありそうな一方、持続可能な社会のための新しい技術やビジネスが拡大したり、今までにない価値観も浸透したりしていきそうです。私も、この社会の動きをキャッチできるよう、日々勉強中です!

解説いただいたのは


崔 真淑さん
エコノミスト。大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に勤務し、最年少女性アナリストとして主要メディアで解説者に抜擢される。現在はGood News and Companies代表、カオナビ社外取締役、昭和女子大学研究員。日経CNBC『崔真淑のサイ視点』ほかテレビ東京、NHK、BSスカパー!等で経済解説を行う。身近に感じる経済解説が人気。

※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。

イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 WEB構成/長南真理恵

2022年2月号
最近気になるNEWSな言葉「脱炭素」より