【中学受験㉕】制服は意外と大事です
「実は楽しい中学受験」シリーズ、様々な角度から中学受験を綴っております。
その中の第22回「ママたちのファッションに注目してみよう」では「ママファッション」について語ってみました。今回もファッション誌の連載らしく、中高一貫校の制服についてお送りしましょう。
ご存知のように、中学や高校に通っている生徒さんたちは制服を着用していることが、むしろ普通。好む、好まざるにかかわらず、1日の殆どをそのお洋服と共に過ごすわけです。よって、特に女の子にとっては一大事!学校選びの決め手の上位にランキングされるのが「THE制服」というのも頷けます。
このことは学校側も熟知しておりまして、制服には知恵を振り絞っている学校は多いです。特に私学は経営がかかっておりますので、大切なお客様(=志願者)を集めるためにも、制服は重要案件。時代のニーズに合わせるために、伝統服をかなぐり捨てて、刷新を図る学校も数知れず。各校の制服を見ているだけでも、今の制服トレンドが浮き彫りになるので興味深いものです。
さて、この制服、結構、お値段が張ります。制服上下、ブラウス(Yシャツ)は当然。指定セーター、指定上履き、指定靴、指定鞄、指定コート。その上に体操服に体育館履きなんかもあったりして、受験料と入学金だけで瘦せ細ってしまったお財布を、更に逆さにしなければならないという悲劇発生。
「え~?体操服には冬バージョンと夏バージョン!?そんな金はないから、もう体育はずっと見学でいっか!?」と良からぬ考えが脳裏をかすめたりするもんです。
これだけならば、まだよいのですが、21世紀を迎えたあたりから、制服にもバリエーションなるものが登場しまして、正装・日常服・合服・夏服・盛夏服、更にはオプションアイテムまでご用意されるケース続出。
「本校では様々なコーディネートが可能です。どうぞ、その日の気分によってお楽しみください」なんて言われた日には、脳内で算盤の珠がパチパチ鳴り響くこと請け合い。
ショックを与えるようで恐縮ですが、これにプラスして「こちらが本校の高校制服です」なんて爽やかにご紹介を受けることもございますので、親たる者、立ちくらみには注意です。
そんなこんなな制服。子どもにとっても思い入れがあるものです。その証拠は学園祭に出かけてみるとよく分かります。その学校の生徒さんがそこの制服を着ていることは当然なんですが、お客として来ている男子・女子の面々は必ずと言ってもいいほどに自分の学校の制服着用。
私世代の若かりし頃は、学校以外での制服着用は結婚式と葬式って相場が決まっていたもんですが、きょうびの若者たちは学校の看板背負って、他校にお邪魔しますわね。
まあ、そりゃそうです。一目見りゃ、身元もわかって自己紹介もスムース。どうぞ、楽しい青春時代をお楽しみください!というものです。
実際に、現役の生徒さん達にインタビューすると、「制服愛」を語ってくれることも結構あります。また、色んな学校さんにお邪魔しますが、先生方それぞれからも、制服にまつわる素敵なエピソードは沢山聞かせてもらっています。
例えば、中学と高校でセーラー服のリボンの色が違う学校では、ある年の3月、中3生全員が先生たちを招いて校庭に集合したそうです。そして、先生方に3年間の感謝を伝えた後「私たち、高校生になります!」と一斉にそのリボンを空に投げたというのです。
この話を教えて下さった学校では「また、すぐに高校で会えるのにね…。あの子たちったら(なんていい子たちばかり)…」って、先生方みんなで涙されていたのが印象的でした。
やはり、それぞれに格別な思いがあるのが学校制服ということなんでしょう。
特に私立中高一貫校の生徒さんは志望順位があるにせよ「自らが、自らの意思で選んで、入学資格を努力でゲット」した上でのお入学です。大抵の生徒さんは、そのことに自尊心を持っておりますし、これは人格形成上でも大変好ましいことだと思います。
自分の力で得た称号とも言える「我が道」の象徴が「制服」なのです。思い入れがないわけがありません。(そこのお母さん、我が子が脱いだ制服のズボンが例え、蛇腹状になっていたとしてもです(笑))
制服というのは大人もそうですが、身に着けた瞬間にスイッチが入るものなのかもしれません。たかが制服、されど制服。
「憧れの制服」を着られる日を夢見て、今日も頑張る中学受験生の皆さん、願いが叶いますようにと応援しています!
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香