長谷川京子さん「人生をサバイブする力は自信があります」

色っぽく、逞しく、意志のある女性という印象のある長谷川京子さん。歳を重ねるほど考えや生き方は外見に現れるといいますが、子育てにおいても彼女なりの哲学がしっかり。「ナイスな大人に育てるためのナイスな子育て」、参考になります♡

※掲載中の情報はVERY NAVY2021年12月号掲載時のものです。

「宿題を追えず周りと比べて
焦燥感に駆られたことも。
今はアウトソーシングも
取り入れ、親子関係も良好に」

人目が気になる思春期の息子。
「ママ、普通の格好してね」

先日、息子が4歳、娘が2歳のときに連載が始まったエッセイが1冊の本になりました。その時々の心のうちを素直に綴ったエッセイは、バタバタと通り過ぎた7年半の育児を振り返るきっかけにも。息子は今小学6年生になり、思春期、反抗期なのかなと感じる場面もあります。人前で私に甘えることがなくなり、周りの目を気にすることが増えた気がしますね。授業参観が近づくと「ママ、普通の格好してきてね」と言われたりして。派手な色を着ているわけでもなく、露出をしているわけでもなく、本当に普通の格好をしているんですよ(笑)。人前に出る仕事をしているので他のママとちょっと違うところもあるのかなとは思いますが、「普通って何よ!」と教えて欲しいくらいです。

母親にあれこれうるさく言われるのも嫌そうで、たまに「うるせえ」なんて悪い言葉を使うことも。どこかでそういう年頃だとは理解しつつも、無視はできないのでやっぱり叱ります。ただ「ばばあ」はまだ言われたことはなく、そこは私に対して死んでも言ってはいけない言葉だと空気で理解しているような気がしますね。それでも息子が妹とやり合うことはだいぶ減って、今は娘を叱ることの方が多いかも。やらなければならないことがあるのに好きなことを優先してしまうのは私の血だと思うのですが、「あれやりなさい、これやりなさい」と声がけしても、なかなかやってくれない。何日かは放置して、それでもやらないとドカーンと爆発。ひとつ見つけたら、あっちもこっちもほじくり返してしまうのはどうしてなんでしょう。怒って怒って、嫌な気分になって、言いすぎたかなと反省して、仲直りして。もう、そんな毎日の繰り返しですよ。

勉強は苦手でも、
人生を生き抜く術なら教えられる

周りのお母さんを見ていると、今学校でどんなことをやっているとか、宿題やテスト範囲をきちんと把握している方がとても多くて、すごいなって思います。私はそれが全然出来なくて、最初の頃は焦燥感に駆られたり、罪悪感を感じることもありました。もともと学校の勉強が苦手で芸能界に入ったようなもの(笑)。そこからは必要なものを学んで自分自身を育てる努力はしてきましたが、子どもに対しては勉強をしておけば、いい学校に通っておけば人生の保険になるんじゃないかと、捨てきれない部分がやっぱりあるんです。小学校受験や留学は「これを経験したら、生き方の選択肢が広がるかもしれない」という感覚でチャレンジしたこと。ただ、子どもの勉強を自分が見ることは、ある瞬間から諦めました。勉強が苦手なのに、無理してイライラして険悪になって、食事の時間も楽しく過ごせなくなるとか、それは違うなと思ったんです。

思春期の子育ては、もっと子どもの心を気遣えるようなコミュニケーションが大切と感じていて、それが出来るためには親に心の余裕が必要。今は子どもの学習のフォローは家庭教師の先生にも頼るなどアウトソーシングもしています。お任せする分、私は働いて家庭教師代を稼げばいいんだと割り切ることにしました。その代わり学校教育では補えない、人生をサバイブする力は多少ですが自信があります。「そういう場面になったら頼ってよ」と、こんなお母さんの在り方もありなんじゃないのかなって。

ジャケット ¥152,900 パンツ ¥56,100(ともにゴールデン グース/ゴールデン グース 東京店)ブラウス ¥56,100(ヴィンス/コロネット)ローファー ¥94,600(トッズ/トッズ・ジャパン)チェーンネックレス ¥338,800(ミラモア/ミラモア ファイン ジュエリー)カメオネックレス ¥61,600(トムウッド/トムウッド プロジェクト)ブレスレットは本人私物

「親の色眼鏡で意見はしない。
良いも悪いも自分の目で判断
できる公平で責任感のある心を
持って欲しい」

一歩外に出たら〝ナイスな人〟
であって欲しい

息子は野球を頑張っていて、娘はダンスが好き。でも、将来の具体的な夢はまだなく、子どもは親の所有物ではないので、好きな道を見つけて歩めばいいと思っています。大人になったら親の脛はかじらないことを前提で。ただ、人としての理想はあって、家の中では多少ダメなところはあっても、一歩外に出たら“ナイスな人”であって欲しいんです。「ありがとう、ごめんなさい」がきちんと言えて、目を見て挨拶ができて、マナーが守れて、心配りのできる人。当たり前のことかもしれませんが、意外と出来なかったりする。この仕事をしていると、人に好かれることの大切さを感じることが多く、みんなに愛されるのは人間的にナイスな人ばかり。この間、娘の習い事のお迎えに行ったときに「ママ、ちょっと待ってて!」と近くにあるお寺に走っていき、習い事の上履き袋を手に戻ってきました。聞くと、前回の習い事の日は雨が降っていて「お地蔵さんが雨に濡れてかわいそうだった」と、上履き袋を被せてあげたそうなんです。普段は私のことを怒らせてばかりの娘ですが、その心を持っているだけで十分なんじゃないか、その心をもっと大切に育ててあげるのが親の仕事なんじゃないかと改めて感じた瞬間でした。

小さな社会の安心より
大きな世界で可能性を広げて欲しい

子育てで一番気をつけているのは、色眼鏡で人を判断しないこと。子どもの話を聞き、関わっている人のことを「どうかな」と思うことはあっても、否定的な発言はしません。いいこと悪いことの線引きは必要でそれについて話すことはあっても、「◯◯だから◯◯な子」という色眼鏡で判断するのは絶対に嫌なんです。みんな平等であるべきだし、親や他人の意見ではなく、自分の目できちんと人を見ることのできる人になって欲しいから。危ない橋を渡ってもらいたくないがために、自分の経験から助言したくなることもあり、そこはいつも葛藤しています。

特に東京は選んだものばかりに囲まれた限定的な社会で暮らす人たちも多く、そういうご家庭の方たちは好みが明確なのでブレがない。立ち居振舞いに余裕があって、心穏やかで素敵な方がいっぱいいるんですよね。そんな世界に憧れたこともあったし、今もいいなと思うことはあります。ただ、私はそういう生き方をしてこなかった。雑草みたいに多様な環境でいろんな刺激を受け、知らなかった世界の魅力を教わり、失敗して学びながら心惹かれるものをチョイスして、今いる場所に辿り着くことができたと思うんです。人生や子育てに正解・不正解はないけれど、食わず嫌いはもったいない。子どもたちもなるべく多くの人や世界に触れ、刺激を受けながら感性を伸ばして欲しい。培った経験はすべて自分の血と肉になり、将来きっとそれが役に立つ日がやってくるはずだから。

Profile 長谷川京子さん

はせがわ きょうこ。1978年生まれ、ファッションモデルとしてデビュー、現在は女優として映画やドラマで活躍する傍ら、ランジェリーブランド「ESS by(エス バイ)」のプロデュースやWhim Gazetteとのコラボレーションなど、幅広いジャンルで才能を発揮。

食と家族の記憶をつづったエッセイ『長谷川京子 おいしい記録』¥1,760(集英社)より、兄妹の後ろ姿のカット。エッセイ開始時4歳と2歳だった兄妹が、現在は小学校6年生と4年生。最近はご近所のお寿司屋さんに親子で行くこともあるのだとか。

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撮影/竹内裕二〈BALLPARK〉スタイリング/樋田直子〈AGENCE HIRATA〉ヘア/Dai Michishita メーク/DAKUZAKU〈TRON〉 取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子

 

VERY NAVY12月号『長谷川京子さんインタビュー 子育て第2シーズンどうですか?』から 詳しくは2021年11/6発売VERY NAVY12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。