「途上国の水と衛生」”世界平和”のために私たちができること

「平和とは何ですか?」。日本だけでなく、世界に目を開き、さまざまな課題と向き合い、行動を起こしている女性たちがいます。小さな活動が、一歩ずつ着実に広がりを見せています。そして、その先にこそ「真の平和」を実現するための手がかりがありそうです。

高橋 郁さん(44歳・東京都在住) NPO法人 ウォーターエイドジャパン 事務局長

〝清潔な水〟があれば衛生習慣が生まれ、 農作物を育て、子どもの教育も進む――
途上国の暮らしは変わり、 争いだって少なくなるのです

途上国に清潔な水と適切なトイレを設置しているウォーターエイド。,81年にイギリスで発足し、,13年に日本法人が設立されました。その立ち上げを一手に担ったのが事務局長の高橋郁さんです。「メルマガで立ち上げメンバー募集の記事に目が留まり、興味のある分野だったので『これだ!』とスグに飛びつきました」。

現在、世界で清潔な水を利用できない人は、7億8、5 0 0万人。適切なトイレを使えない人は20億人います。水と平和には密接な関係があります。「途上国の子ども達は、水を求めて、数キロ離れた地に何度も水汲みをしに行きます。それに時間を取られるため、教育を受けることができません。苦労して汲んできた水は清潔でなく、常に感染症のリスクがつきまといます。また適切なトイレがないことも問題です。草むらで用を足さなければならず、女性達はレイプやいたずらの危険に脅かされています。彼女達はトイレの回数を減らすため、食事や飲み物を制限しているのです。“人々が安心・安全に暮らせること”が平和だとすれば、この状況は平和とはいえません」。

この現状を変えるべくウォーターエイドは、給水設備の設置、トイレの普及と衛生習慣の啓発を行っています。「正しく使われて、初めて清潔な水の仕組みが出来上がります。そのため、現地の人達にトイレの使い方、手洗いの習慣、食べ物の保管方法など、これまでの習慣を変える必要性を理解してもらっています」。

この好循環ができた東ティモールの小さな村の話をしてくれました。「水汲みする必要がなくなった子ども達は毎日学校に通えるようになり、大人たちは田畑を耕し、農作物を育てるようになっていました。誰かに教えられたわけではなく、自分達で考え行動する彼らのパワーに感動しました。そして、そのきっかけが“水”であり、自分の仕事の意義を改めて感じました」。

現地で頑張る同僚たちの活動を支えるために、日本法人では情報発信に力を入れているそうです。「寄付で成り立っている事業のため、まず“世界に水や衛生の問題があること”を知ってもらうことが大切です。そこで,18年からACジャパンでCMを放送してもらっていました。お陰で認知は高まり、寄付も増えました。その一方で、日本では清潔な水を使えて当たり前のため、遠い異国の問題を“問題”として認識しづらいことも事実です。この点を今後の課題として取り組んでいきます」。

    日本での啓蒙活動で使用するグッズ類。
    給水設備が設置された村では生活が一変しました。子ども達の日課だった水汲み作業はなくなり、毎日学校に通えるようになりました。
    大人たちは自ら畑を耕すようになり、数カ月後には台地に緑が溢れるように。
    政府が設置した給水設備は、水質汚染で使えない状態になっていました。「ウォーターエイドでは水質調査を行い、水の安全性を確認しています」。
    高1の夏に、南アフリカのアパルトヘイトを知ったことで、国際公務員の仕事に興味を持ちました。
    大学のゼミ旅行。経由地のインドで体調を崩したそう。「途上国で生きる難しさを思い知らされました」。
    大学卒業後、就職した会社の同僚と。

撮影/BOCO 取材/髙谷麻夕 ※情報は2021年9月号掲載時のものです。

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