宋美玄さん「ネイビーの装いに合う腕時計は母親である自分へのスイッチ」

出産を迎えた女性、小さな子どもを抱える女性、その喜びの陰に潜む、殺伐とした現実。産婦人科医として、そして二児の母として、すべての女性たちが我慢を強いられることのないように、決して取り残されることのないように、宋美玄さんは、声を発し続ける。守られるべきは、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ*であると。

*リプロダクティブ・ヘルス・ライツとは、生殖に関する健康と権利のこと。

 

Q. 愛用の時計は何ですか?

A. ミニサントス ドゥ モワゼル
パリの本店で、購入しました。

 

 

Q. あなたにとって、この時計の存在とは?

A. ネイビーの装いを引き立てて、母親である自分を気づかせてくれるもの。

 

Q. 時間との付き合い方で意識していることは?

A. 常に前を向き続けること。

 

堂々と美しく、
母である時間を
伸びやかに生きるために

「女性は女に生まれたことで、いろんなものを諦めなくてはいけないと思わされてきたんです。生理の痛みも、妊娠も子育ても。でも本当は違う」―。産婦人科のクリニックを営みながら、社会に向け声を発し続けている宋美玄さん。診察室で多くの涙に触れるたび、医療だけでは解決することのできない、今を生きる女性たちが抱える根本的な問題と向き合ってきた。
「私が出産したとき、子どもを産んだ人と産んでいない人との間には、見えない分断がありました。社会復帰する女性が突きつけられる時短制度、家庭内での地位の低さ。家事も育児も全部抱えて、家では最終責任者になる。日本は貧しい国じゃないのに、どこか生き辛さがあるとすれば、それは親になったひとが感じる冷たい社会という現実です」。母になって知り得た感情は、次に親になるひとに引き継ぐまいという強い信念へと変わった。
普段は腕時計をしない宋さんが、長女の送り迎えのためネイビーの洋服に合うようにと購入したカルティエ。上品で控えめな佇まいの腕時計は、宋さん自身に母である自分を思い起こさせるものに。「母親にとって何よりも必要なのは、心身の余裕だと身をもって知りました。さらに、女性が働くという自由の翼を得るためには、何も諦めなくていい社会が待っているといいですよね。心の余裕が生まれたら、目の前で遊ぶ子どもがパッと振り向いたときにちゃんと見てあげられる親にきっとなれるんですから」

Profile

宋美玄

1976年兵庫県神戸生まれ。産婦人科専門医、医学博士。「丸の内の森レディースクリニック」院長。大阪大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院産婦人科入局。川崎医科大学講師就任後、イギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。帰国後、産婦人科医として従事しながら執筆活動もこなし『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)がベストセラーに。テレビのコメンテーターをしながらも、『医者が教える女体大全』(ダイヤモンド社)、『生理だいじょうぶブック』(小学館)など、女性の体にまつわる数多くの本を上梓。診察95%、メディアへの露出5%としながら、さまざまな分野で女性の性や体の悩み、妊娠出産などに、女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。私生活では、9歳の娘、5歳の息子を持つママの顔も。

撮影/金 玖美 ヘア・メーク/イオギユミ 取材・文/須賀美季 編集/渋澤しょうこ

 

VERY NAVY 5月号『一緒に成長、私を語る〝時計〟のはなし』から 
詳しくは2021年4/7発売VERY NAVY 5月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

 

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