内田文郁さんが考えるヴィンテージ「バッグは自分を成長させてくれるもの」

どんなに年齢を重ねても取り巻く環境が変わっても、もの選びに対して大切にしていることって変わらなかったりするもの。特に自分軸がしっかりとある人はなおさら。そんな審美眼をお持ちの方々に、ずっと使い続けたいバッグ選びのマイルールを伺いました。今回は、有名ヴィンテージショップのバイヤーを経て自身のブランドFUMIKA_UCHIDAのデザインを手がける内田文郁さんです。

 

ものは誰から買うか、
どこで買うかも大事。
バッグは自分を
成長させてくれるもの

FUMIKA_UCHIDAデザイナー 内田文郁さん


バイイングやデザインのシーンで、メモやメジャー、携帯などを入れて実用的に使っているエルメスのウエストバッグ。バッグなのか洋服なのかわからない気分で、ポケットに物を入れるような感じを楽しんでいます。グリーンのレザーコートのように、ヴィンテージと合わせることが多いです。

 

しなやかにタフに活動する女性像に
近づけてくれる存在

 

15年ほど前、バイイングの仕事で訪れたNYのセカンドハンドショップで出合った、エルメスのウエストバッグ。マルタン・マルジェラがデザインしたエルメスとは知らずに、描く曲線の美しさや、馬具を思わせる見たことのないデザインに惹かれて、目にした瞬間、気持ちが高揚したのを今でも覚えています。当時の自分には安いものではなかったけれど、「このバッグは持っていたほうがいいかも」と直感し、購入しました。
私にとってバッグは、自分のスタイルや立ち位置を表すもの。身につけても手をふさがないこのバッグは、枠に捉われず、しなやかにタフに活動する女性像に近づけてくれる存在。長年ヴィンテージの世界に身を置く中で、哲学や技術を元に作り出されるアイテムこそ、年月を経てそのものの良さが際立つことを実感してきました。特に劣化しない革の質にこだわられ、職人の高い技術で仕上げられたメゾンブランドのものは、時代を超えて長く受け継がれていく。ものづくりに対する熱量を感じられて、自分の感覚を頼りに型にはまらないスタイルを表現できるのも、セカンドハンドの魅力だと思います。
最近は何かを買うときは〝誰から買うか〟を意識するようになりました。ものが溢れていて、なんでもオンラインで買える今だからこそ、自分が信頼する人から買う、という体験をより大事にしています。いい接客をしてもらえたからちゃんと応える、という関係性は素敵だし、そういうシーンはずっと記憶に残って、ものの価値をさらに高めてくれると思います。バッグ選びで心掛けているのは、普遍的に使えるかどうか。トレンドのデザインに一瞬飛びつく気持ちもありますが、自分の生活のシーンにハマるかどうかが最優先です。エルメスのバッグもそうですが、少し背伸びして買ったバッグは、自分を変えたり、成長させてくれるもの。金額によらず、時を経て自分の中で価値が高まりそうなバッグを買うことは、投資になると思います。だから今の自分にはまだ早いと感じるアイテムでも、理想の女性像を体現するものであれば投資する価値はある。そうありたい、という意思を持って、身の回りのものを選ぶスタンスは素敵だし、私自身も大切にしていきたいと思っています。

 

2011 Springのキャンペーンビジュアルに惹かれて購入したセリーヌのバッグ。アウトラインをきれいに保ったまま持つよりも、荷物を入れてボンッと膨らませてラフに持つのが私好み。

大きいバッグを担いで、行動を起こそうとしている女性像をイメージして、2017年にデザインしたFUMIKA_UCHIDAのバッグ。商品化されなかったのですが、せっかくなので自分で愛用中。たくさん入るので出張のときのベストパートナーです。

 

FUMIKA_UCHIDAデザイナー
内田文郁さん
中目黒のヴィンテージショップJANTIQUESのバイヤーを経て、2014年から自身のブランドFUMIKA_UCHIDAをスタート。「アイデンティティのある女性のための服」がコンセプト。

 

撮影/森脇裕介 ヘア・メーク/秋山 瞳〈PEACE MONKEY〉 取材・文/坂本結香 編集/永吉徳子

 

VERY NAVY 4月号『これからは「バッグで未来の私に投資」♡Part2〝未来に投資〟上手な人に見る 正解バッグ、7つの形』から
詳しくは2021年3/5発売VERY NAVY 4月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。