田中美佐子さんからのメッセージ「何もかもできなくていい。何かができればいい」<前編>

ドラマ「きのう何食べた?」で、「あんなにきれいな60歳いる?」と話題沸騰。最近では、UQモバイルの「60歳以上、国内通話し放題」のCMで、頭いっぱいに色とりどりのカーラーをつけたおばちゃん姿でも注目を集める田中美佐子さん。まさに今、60歳からの自分の人生を思う存分に謳歌しているようです。

90年代トレンディドラマの常連。屈託のない愛らしい笑顔は90年代当時のまま。まさに奇跡の60歳です。

田中美佐子さん(60歳)

エステやマッサージより運動をしたい派。53歳から始めたテニスは今でも週一でやっています

 53歳でテニスを始めました。小学生だった娘をテニススクールに送迎していたとき、ママ友から誘われたのがきっかけです。友達と一緒にテニスができると思って入会したのに、彼女はダントツにうまくて、私は初級クラス。必死で練習して、やっと追いついたと思ったら、彼女は引っ越して退会していたの(笑)。でも、すっかりテニスにハマって、今も週一でスクールに通っています。テレビに出ている人間なのに、あまりテレビは観ません。でも、テニスの試合は録画してでも観ます。特にノバク・ジョコビッチ選手の大ファン。彼のプレイを観ているときは本当に幸せですね。  テニスを始めてからは筋肉がつき、週3回通っていた頃は、洋服が入らなくなったので全部捨てました(笑)。もうカッコいい洋服は着こなせなくなってしまったけれど、今はそんな自分を受け入れています。

美容より運動が大事。家庭菜園にもハマってます

 エステやマッサージに行くくらいなら、運動したいタイプ。恥ずかしいくらい美容と呼べることは全然していません。セルフケアも、若い頃から化粧水1本でずっと生きてきました(笑)。乳液をつけたことはないし、美容液って何?っていう感じ。ただ化粧水にはこだわりがあり、今も母乳に含まれる成分のラクトフェリンを豊富に含んだメーテローションを使っています。友達から教えてもらって通販で取り寄せていますが、めちゃくちゃいい。手で1回つけるだけで浸透して、保湿力も高くて、これ1本でまったく乾燥しません。でも、同じものを長く使っていると、ある日突然アレルギーが出てしまって、何年かごとに替えています。  白髪は少しありますが、白髪染めもカラーリングもしたことがありません。娘に「お母さん、シャンプーがギスギスする」と言われながらも、無添加シャンプーを使っています。  実は音に敏感です。少しずつ耳が悪くなってきているのとは反対に、静かになる夕方から夜にかけて、「シーン」という音が聞こえるようになりました。病院に行くと「それは老化の証し」とのことで、年齢を重ねるとそうした面倒なことが増えてくるけれど、それにも徐々に慣れ、日常になってくるので気にならなくなると説明を受けました。寝ていても雨の音や新聞配達の音、愛犬の歩く音などが気になって、寝ることが難しくなるんですよね。エイジングであらゆる感覚が鈍感になっていくと思っていたのですが、逆に耳は敏感になっています。なので寝るときは耳栓をするようになりました。飛行機の中でも、BOSEのワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンエクリプスをつけることで、快適に過ごせるようになりましたね。  鼻栓もしたいくらい臭いにも敏感です。保存容器の臭いが気になったり、洗濯物が洗えてないように思えたり。  歳を重ねると、防衛本能なのか、全体的にアンテナがたくさん出てきているのかなと自分的には感じています。  夫(タレントの深沢邦之さん)に「君、寝る前のお菓子をやめたら痩せるよ」と言われても、どうしてもやめられない。そのために夕飯の炭水化物を抜くくらい(笑)。どこどこのスイーツ、といったこだわりはなく、板チョコ1枚だったり、アイスを食べた後にさらにチョコを食べたりしていると、横で娘が「お母さん、それも?」という顔をしています。胃を壊したこともあるんですけどね。ストレス解消でもあるんです。  矛盾するようですが、家庭菜園をし、酵素作りもしています。主に梅酵素とレモン酵素を作っているのですが、体には優秀な菌がいっぱいあって、自分で作ると、自分の常在菌が腸に届くので、善玉菌が増えるんですって。何もしないで善玉菌が増えることはまずないので、自ら入れてあげるのがいいそうです。人参やりんごなどで作るスムージーを夕飯前に飲むのが習慣ですが、そこにも酵素を加えます。それを飲み始めてから、家族の腸の調子がよくなって、風邪もひかなくなりましたね。  スムージーには人参を入れるのがこだわりです。友人に乳がんに罹患する人が多く、乳がん関連の本を読んで勉強したら、特に人参が予防にいいと何にでも書かれていて、家庭菜園で作るようになりました。私も意識して食べるようにしています。

プロポーズは私から。35歳で結婚しました

 22歳でデビューし、立て続けに映画やドラマに出て、30代半ばまではものすごく忙しかったです。仕事が忙しくても、その後遊びに行っては寝ないでまた仕事に行ったこともありました。  周囲の女優さんと話していると、結婚は難しいと感じている方が多く、女優でありながら一生寄り添う人を見つけるのは無理かなと諦める気持ちもありました。でも私は結婚したかった。最終的にどういう人と結婚するのがいいかと考えたとき、あまり好きすぎると大変だから、生活を共にしてラクな人、そして私の仕事を理解してくれる人がいいと思いました。そういう気持ちで周囲を見まわしたとき、数カ月付き人をしてくれた夫がいました。誠実な人柄をわかっていたし、夫は私の好き嫌いも全部知っているうえで尊敬もしてくれて、私を人として見てくれていました。「結婚しない?」と私からプロポーズ。彼はとても躊躇していましたね。自分は男として何もできていないと恐怖心を感じたようで、すぐには受け入れてくれませんでした。後から聞いたことですが、義父に相談をしたら、「美佐子さんはお前を支えにして生きているんだろう。お前が主夫となって守ってあげなさい」と言われ、その言葉で決心がついたようです。今思ってもお義父さんには感謝しかありません。結婚が決まってほっとしたし、嬉しかった。35歳でした。

田中美佐子さんの美の秘密①

炭酸美容のプロージョンは、メーク時の必需品。ひと振りするだけで、疲れた肌も瑞々しく回復。コアブレードのハンドルチューブはテニスのために腕の力や背筋を鍛えています。

肌と体の健康のための数少ない必須アイテム

田中美佐子さんの美の秘密②

肌を乾燥から守ってくれるメーテローションとルーカスポーポークリーム。ローションは朝晩、クリームはワセリン代わりに冬の時期、肌が荒れたときだけ使います。

スキンケアは保湿を重視。この2つさえあればいい

●Profile ’59年島根県出身。’81年ドラマ「想い出づくり」でTVデビュー。’82年初主演映画『ダイアモンドは傷つかない』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。その後も映画、ドラマ、舞台などで活躍。主演ドラマは「十年愛」「Age,35 恋しくて」など多数。近年はドラマ「獣になれない私たち」「きのう何食べた?」映画『寝ても覚めても』『糸』などに出演。来春1月には主演舞台「よみがえる明治座東京喜劇」が控える。

後編へつづく 2020年『美ST』12月号掲載 撮影/興村憲彦 ヘア・メーク/樅野知子 スタイリスト/袴田知世枝 取材/安田真里 構成/和田紀子

美ST