山口もえさん「コロナに感染して母・妻として自責の念にかられた」
新型コロナウイルスに感染し入院した、山口もえさん。感染症状は軽かったそうですが、「体よりも精神的につらかった」と話します。今回はその様子を詳しく伺いました。
山口もえさん独占インタビュー Vol.3
感染して分かったことは精神的ダメージの強さ。
母として妻としての自責の念にかられました
▶︎前回のインタビューを読む
入院してつらかったことは何ですか?
病院の先生は毎回防護服にマスク、ゴーグルをつけて、完璧な状態で診察に来ます。私の病室を出るときには、着ていた防護服を全部脱ぎ捨てて、消毒をして部屋を出ていくんです。その姿を毎回見ていて、わたしの診察だけで防護服が何枚必要なんだろうと思い、とても申し訳ない気持ちにもなりつらくなりました。そのほかにもいろいろ自分を責める気持ちがどんどん大きくなって、いつの間にか精神的ダメージを受けてしまっていました。
具体的にどんなことでご自分を責められたのですか?
「夫の仕事にも穴をあけてしまった」「子どもたちも学校に行けなくなってしまった」「どうしてこんなに気をつけていたのにかかってしまったのだろう」「ご近所の方を不安にさせてしまった」…など、妻として母として、そして社会人として、さまざまな罪悪感が生まれました。そして芸能という職業柄、世間に発表しなくてはならず、仕事関係の方やファンの方にもダメージを与えてしまいこの先仕事はどうなってしまうのだろうか、という不安な気持ちも膨らみました。考えだすと眠れないし、食べられない日々でした。
体調を回復させるための入院なのに、メンタルが弱ってしまったのは、本当につらい経験でしたね。
私や夫だけでなく、濃厚接触者の子どもたちも、どこを触ったのか誰と接触したかなど問われ、「なんと悪いことをしてしまったのだろう! 気をつけて生活していたのに、何が悪かったんだろう・・・」という自分を責める気持ちでいっぱいでした。
病院の先生には相談されたのですか?
はい、その状況を伝えたところ心理カウンセラーの先生を紹介していただき、電話でカウンセリングをしていただいたり、眠れるようにと睡眠薬を処方してもらったりもしました。
先生がおっしゃっていたことが印象的だったのですが、「ほとんどの陽性の方がそうなります」と。日本人は真面目で、自分を責めてしまう人が多いのだそうです。そこから鬱になってしまうこともあるようですし、退院したあとも、職場復帰ができなかったり、近所付き合いができなくなってしまう人が、実はたくさんいるのだと知りました。
そんな苦しい気持ちの中、どのようにご自身の士気を保ったのですか。
私は、病院の先生の言葉に救われました。
「もえさん、この病気に勝つことがいちばん大事です。誰しもが病気になってしまうんです。でも、あなたがこの病気になったと分かったこと、そして助かったことで、その広がりを止めることができたと、誇りに思ったほうが良いですよ」と。多くの人が新型コロナウイルスに対してものすごく怖がっていて、「陽性」であることが「悪」みたいな感じだと思うんです。でも、先生がおっしゃってくれた言葉を胸に、少しずつ前を向けるようになりました。
感染してしまった方のメンタルをも蝕んでしまうこともあるのですね。
陽性者に対して都心地域ではわりと理解もあるように思いますが、地方によっては、どこかあぶり出しのような疎外感もあるようだと耳にしました。新型コロナウイルス陽性者の疎外感があまりにもひどいと、回復した後も仕事に復帰できなかったり、場合によっては引っ越ししなくてはならなかったりと、同じ環境で暮らせない場合もあると、そんな悲しいことが現実に起こってしまっているということを入院中に知り、胸が締め付けられる思いでした。
山口もえさんの気づきアドバイス
1.感染してしまっても自分を責めすぎないようにしましょう。
2.もし精神的につらくなったら、すぐに医師に相談しましょう。
最終回は、山口もえさんの退院するタイミングやその後の気苦労、そして、新型コロナウイルスに感染して気づいたことについて語ってもらいます。
▶︎前回までのインタビューを読む
第1回「風邪だけど安心したいから」と受けた検査でまさかの陽性と判明!
山口もえさん
1977年生まれ。ふわっとした可愛いらしいキャラクターが人気で、世代を超えて愛されている。バラエティ番組やドラマ・映画・CMなどに出演し活躍。中学生、小学生、未就園児の3人の子どものママであり、夫は爆笑問題の田中裕二氏。現在は、NHK-E「趣味の園芸やさいの時間」レギュラー出演中。
取材・文/須賀美季 イラスト/コグレチエコ 編集/渋澤しょうこ