【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす⑥風が通ること。

午前9時。

犬の散歩から帰ってくると窓から朝陽が気持ちよさそうに部屋に入り込んでいた。
今日は少し風がある。その空気も家の中に入るように窓を開け放った。

IMG_8478A 庭のハ-ブ IMG_8485 A 庭のハ-ブ

庭のハーブが目に入る。
Mon petit jardin(私の小さな庭)

これは農園の広大な庭の中で、家の裏に自分で作ったほんの小さな庭のことで親しみを込めてそう呼んでいる。引っ越してきた当初、そこには林檎の木が一本、ぽつんとあるだけ、その周りを芝生がぐるりと囲んでいた。その芝生の土を耕し少しずつ気ままに植えたものは、カシス、野イチゴ、イチジク、そしてハーブ。

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大好物のカシスは、元々他の場所にあるものの枝を挿し木で増やした。シーズンになるとカシスの実のまっ黒い森が現れる。野イチゴも引っ越し祝いに友人が一株くれたものがあれよあれよと波の様に広がり、初夏になるとあちらこちらに甘い香りの小さな赤い実をつける。ミントやセージなどのハーブもあっという間に手足を広げ果てしなく伸びた。

何もなかった空間があれよこれよと植物の生命でにぎやかになっていった。

セージが伸び放題になっていたのを夏前に一度切り直したのだが、もう少し切って風通しを良くしてみようとその足でまた庭に出た。

ハサミを入れようとセージの枝を手に取ると。

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間延びした枝から小さな葉が泡の様に芽吹いている。知らないうちに新しいエネルギ―がどこからかあふれ出ていたのだ。

こういう植物の姿に出会うと体の底から、すごい! と大声で叫びたい気持ちでいっぱいになる。こんなに小さい葉に驚くべき程の元気がぎゅっと詰まっている。それを見ていると、まるで生まれたばかりの赤ちゃんが大きな産声を上げているのを聞いているような感じがした。

 

植物の持つ生命力、その源はどこにあるのだろうか。

そんなことを考えること自体がきっとナンセンスなんだろうと思い直した。

生まれたばかりの赤ちゃんは誰に教えられることもなく大きな声を上げるのだから。

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花をつけているハーブが多いことに気が付き、切り直し・掃除をすることにした。

 

こんな風に特に予定もたてず、庭でごそごそと朝の陽を浴びながら植物に向かい合うことが随分自分の身体と心の栄養につながっているような気がする。

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切り出したハ-ブを家に持ち帰り乾燥させるため麻ひもでまとめる。
器にいれて窓辺にも置いてみた。
一日中、ことあるごとに葉っぱを何回も手で触れる。
その度に浮き立つ香りで気持ちがゼロに戻るのが分かる。

 

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思うがままに成長したハ-ブ。

その姿がまた、私の気持ちに風を通してくれる。

 

 

文・西田啓子/ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/