GoToキャンペーンとの向き合い方

コロナ禍で緊張状態が続くなか、 前倒しでスタートした「Go Toトラベルキャンペーン」。
ほかにも「Go To Eatキャンペーン」 「Go To イベントキャンペーン」「Go To 商店街キャンペーン」も実施が予定されています。 このような状況で、どのように向き合えばいいのでしょうか?

今月解説いただいたのは
女性の目線で見る!
崔 真淑さん

エコノミスト。大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に勤務し、最年少女性アナリストとして主要メディアで解説者に抜擢される。現在は Good News and Companies代表、シーボン社外取締役、昭和女子大学研究員。日経CNBC『崔 真淑のサイ視点』ほかテレビ東京、NHK、BSスカパー!等で経済解説を行う。身近に感じる経済解説が人気。


【Go To キャンペーンとは?】

新型コロナウイルス感染症拡大により、甚大な被害を受けた産業を対象とし、需要喚起と地域の再活性化を目指したキャンペ ーン。 主に4つのキャンペーンがある。

《Go Toトラベルキャンペーン》
旅行業者経由で期間中の旅行商品を購入した消費者に対し、代金の1/2相当額の割引とクーポン等※1を付与。
※1 宿泊割引・クーポン等や、地域産品・飲食・施設などの利用クーポン等を含む。 最大1人あたり2万円分/泊。

《Go To Eatキャンペーン》
オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対し、飲食店で使えるポイント等※2を付与。
登録飲食店で使えるプレミアム付食事券※3を発行。
※2 最大1人あたり1000円分。 ※3 2割相当分の割引等。

《Go To イベントキャンペーン》
チケット会社経由で期間中のイベント・エンターテインメントのチケットを購入した消費者に対し、割引・クーポン等(2割相当分)を付与。

崔 真淑さんが考える
「Go To トラベルキャンペーン」のあり方とは?

キャンセル料補填など、コロナ禍が収まったあとにお金を使いたくなる素地をつくるべき。

経済対策の一環として キャンペーンを開始

新型コロナウイルスの影響は、生活様式だけでなく経済にも影響してい ます。その経済を少しでも上向かせようと、政府は「Go To キャンペー ン」を行うことに。宿泊、サービス、飲食などリモートに移行できない業種 を支えたいというのが狙いです。
しかし、その一方で自治体の一部では帰省の自粛要請をするなど、政策を 決定する側の人たちの間で足並みが 揃わない印象があります。そうなると、 何を指針にしていいか、国民の間で迷 いが生じる状況が続くと予想されま す。 密対策をしながら旅行に行く 人もいれば、自粛を徹底する人もいる、 と千差万別でしょう。
ただ、今回の「Go To キャンペーン」や新型コロナウイルス感染症対策について、どう対応するかだけでなく、 多くの人が政策はどうあるべきかを考えたり、議論したりするいい機会になるのではないかと考えています。

これからの社会についてよく考えるいい機会に

経済学的研究では、旅行に行くかどうかの意思決定が曖昧になる不確実性が高いなかでは、「Go To キャン ペーン」のような需要喚起策を行うのは、税金の費用対効果がよくないとの指摘も。コロナ禍で何が起きるかわからないなか、キャンセル料の負担をするリスクがあれば、仮に新規感染者数が落ち着いても旅行に行こうと考 る人は増えないかもしれません。
私としては、コロナ禍が落ちついたときに、キャンセル料を気にせず安心して旅行計画を立てられるようにすることが大事だと思います。そのためには旅行代金の補助より、キャンセル料の補填など、民間保険会社が被ってくれないコストの請け負いに徹するのはどうだろうとも考えています。 つまり、「コロナ禍が落ちついたときに、 国民が自らお金を使いたくなる素地をつくろう 」ということです。
もちろん、これはあくまで一つの考え方にすぎず、いろいろな考え方があると思います。しかし、新型コロナウイルス感染症による影響は、各国の首脳が「戦争」と例えるような国の緊急事態です。社会がこれからどう変化 していくのか、そしてどんな対策があるのだろうかということを一人一人が考え、国のあり方を改めて再考するいい機会なのかもしれません。

※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。

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イラスト/熊野友紀子