辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2020 vol.6「主演の2人がいろいろスゴい 『双程』の中国BLイケメン」

前回ご紹介したタイのBLドラマ『2gether』に続き、今回取り上げるのは中国のBLドラマ『双程  -A Round Trip To Love-』。キャストの美形ぶりやストーリーの激しさもさることながら、ドラマさながらに恋が芽生えてしまった(らしい)主演の2人など…いろいろスゴい大陸系BLに酷暑に疲れた心身をゆだねてみては?

辛酸なめ子の「おうちで楽しむ『双程』イケメン4選」

大陸のBLは想像以上に激しい物語でした……。『双程 -A Round Trip To Love-』は2016年に放送され、主演の2人のイケメンぶりが話題になったドラマです。タイのBLに漂う南国の抜け感やコメディタッチとは皆無のシリアスで背徳感漂う作品で、180度違う世界観でしたが見ごたえありました。
中国BL小説界で有名な作家、藍淋(ラン・リン)の原作なだけあって、BLのツボを抑えたドラマティックな展開でした。タイの『2gether』が胸キュンだとしたら、『双程』は胸にズンとくる感じです。常に真顔の深刻さがエロスを際立たせます。主演の2人に関しては公式サイトに「中国13億が生んだ奇跡の美男子」とキャッチフレーズが。大袈裟ではなく、かなりの美青年でした。
ストーリーの始まりは大学で、内向的で読書好きなチェン・イーチェンと、チャラい御曹司のルー・フォンがルームメイトになり、反対のタイプだからこそ惹かれていきます。ルー・フォンがメガネ姿のイーチェンに「そのメガネ、ダサいな」と言いながら外したらイケメンだと判明、「他の奴らには素顔を見せるなよ」と独占欲を見せたシーンが象徴的でした。この時点でルー・フォンが攻めで、イーチェンが受けの予兆が……。『2gether』のように付き合うまでの軌跡や駆け引きはほとんど描かれず、スピーディな展開でドラマ開始後11分でキスしていたのには驚かされました。中国の発展の早さがここにも現れているようです。しばらくデートしたり、おんぶしたりベッドで戯れたり、結婚式ごっこをしたりとイチャつく2人でしたが、次第に運命の歯車が不吉な軋みを……。2人が一緒に聴いていた音楽にも不穏さが漂っています。不気味なメロディーで「悪夢は逃げ出さない〜♪」という女性の歌声が。この時、ジャスティン・ビーバーとか聴いていれば2人の運命は違ったものになっていたかもしれません。
愛し合っていたイーチェンとルー・フォンですが、彼のせいで家族がめちゃくちゃになったとイーチェンは憎しみを抱くようになります。ここまでのサゲ○ンはなかなかいないと思わせる、運気下げまくりの男性です。そういえば、ルー・フォンとイーチェンが工事現場で会っていた時、上から瓦礫が落ちてきたことも……。しかし恋愛ドラマには、サゲ○ンがいないと事件が起きずドラマが盛り上がらないという一面が。ルー・フォンは人の運気を吸って、会社の業績を上げてゆき、ますますリッチになっていきます。そして別れていたイーチェン(建築家になっていた)を執拗に探し出し、今度は拉致・監禁するという強引な手段に出るのでした。そこでの拷問的なプレイがあまりにも激しくて官能的で……。手錠で繋いだり、手足をベッドに束縛、水責めなどの折檻が繰り広げられていました。まさに究極の攻めと受けの関係です。
そんなスペクタクルなドラマで目立っていたイケメンたちは以下の4人です。

受け身っぷりに萌える…チェン・イーチェン

演じていたホワン・ジーシャンはイケメンすぎるコスプレイヤーとして人気だそうです。端正な顔立ちの陰キャ男子。タッキーと小室哲哉を足して割ったようなルックスです。身長175㎝ですが、攻めのルー・フォンが185㎝あるので小柄に見えます。おんぶされたり、お姫様抱っこされたり、受け身でされるがままなところに萌えます。ルー・フォンのアグレッシブなアプローチに戸惑いながらも、彼を受け入れていきます。『2gether』では1つのプリッツを一緒に食べる胸キュンシーンがありましたが、このドラマではなんと1本の麺を両側から吸ってキス、というシーンが。シュールなシチュエーションを真剣な顔で演じ切っていてすごいです。とにかくほとんど笑顔がないキャラ。常に何かに絶望しているような陰気な表情で、自ら不幸を引き寄せるタイプなのかもしれません。

イーチェンへの愛が暴走しまくり…ルー・フォン

ルー・フォンは御曹司で高身長。所得格差と身長差など、格差が多いほどドラマが盛り上がります。金に糸目はつけず、ペアの指輪を注文してイーチェンにプレゼント。2人が離れ離れになった時は「俺が戻るその日まで耐えてくれ」などと手紙を綴る情熱的な男性です。イーチェンへの思いが強すぎて暴走することも。経営者として成功しているルー・フォンは冷酷でサイコパス的な一面もあるようです。イーチェンの家族を不幸にしただけでなく、今度はイーチェン自身を拉致・監禁。前世に因縁でもあるのでしょうか。イーチェンの飲み物に薬を入れて縛ったり、後ろから責め立て「体が求めてるじゃないか」と囁いたり、刺激的なシーンが満載でした。BLの愛が激しくなると、殺す、殺されるといった境地まて行き着くようです。

兄と同じ名前でややこしい…チェン・イーチェン

時には忠告したり、失恋した兄を励ましたり、弟としてサポートしようとする姿が健気でした。兄に似た端正な顔立ちで、ボーカルとして兄の恋愛について歌ったりするシーンもありました。「青春の美しさをいたずらに消耗し〜♪」「散った花びらにつたう雨の雫〜♪」と、よく聴いたらネガティブな歌詞でしたが……。実は兄の影響が強く、彼もまた男性を愛するように。しかし兄カップルのいざこざのせいで致命的な怪我を負ってしまいます。薄幸弟キャラに密かに萌える視聴者は多そうです。

一見怪しいけどよく見るとイケメン…チン・ラン

調子の良いキャラで、後ろ髪がやたら長いところに胡散臭さを感じていましたが、実は普通にいい人でした。ルー・フォンが初対面の時チン・ランのことをやたら警戒していたので、きっとチン・ランはこれから詐欺とか犯罪を何かやらかすに違いない、と予想していたのですが……一番ヤバい奴はルー・フォンだったようです。髪型が変ですが、よく見たらイケメンでした。ダサさに萌える人は一定数いることでしょう。

中国BLは耽美的で美しく、ラブシーンも適度に激しくて充実感がありました。しかしこのドラマだけでは終わらず、現実のストーリーもスペクタクルでした。一説によると、主演のホワン・ジーシャンとガオ・タイユーが役に入りすぎたのか実際に恋愛関係に発展。当時のMV撮影の動画や写真を見ましたが、膝に座ったり手を繋いだり、顎の下の毛を抜いたり、皆が見ている前で公然とイチャついていました。役柄の時のシリアスな表情ではなくデレデレしていましたが……。そんな2人を事務所が引き離そうとしたりと、モニターの外でもドラマが展開。ピュアな男子はBLを演じると本当に好きになってしまうのでしょうか。これからも期待と妄想を胸にBLドラマを見つめたいです。

中国13億の人口から生まれた伝説のBLドラマ『双程』

『双程 -A Round Trip To Love-』
中国BL小説界の人気作家・藍淋(ラン・リン)。処女作『双程』が圧倒的支持を得てたちまち人気作家に。ドラマ『双程 -A Round Trip To Love-』は原作を忠実に実写化した作品として、その完璧な映像美に中国本土が熱狂。藍淋が得意とする、強い攻めと弱い受けのカップルの描写が中国のみならず、アジア全土で旋風を巻き起こした話題作がRakutenTVで配信中。詳しくはこちらから
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辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)など。

撮影/村山元一(SIGINO)<辛酸さん> 構成/CLASSY.編集部