主婦だった私が「不登校児も来られるコワーキングスペース」を作った理由 我が家の不登校体験談番外編
前半に続き、不登校児も行けるコワーキングスペース「ぼっとう&よはく」をオープンした2児の母s.akkoさんにお話を伺いました。昨年オープンしたばかりの店舗は緊急事態宣言を受け一時閉店、この6月から再開したばかり。お子さんの幼稚園、小学校も休校となるなかsさんが考えていたことは……?
お話を伺ったのは…
s.akkoさん コワーキングスペース「ぼっとう&よはく」店主/子ども・小4、幼稚園年長
人生の中の「空白期間」は決して無駄じゃない
──「ぼっとう&よはく」という店名が印象的ですね。
「没頭しよう 余白を楽しもう」というコンセプトです。私がこのコワーキングスペースを作ったときに浮かんだキーワードが「没頭する」ということ。娘は、お気に入りの本や漫画を読んだり、工作やゲームをしたりといつも何かに没頭しています。「早く宿題をしなさい」と怒ってしまうことも多いのですが、その姿を見てあんなに好きなことに没頭できるなんてうらやましいなとも感じていました。今の世の中は、「時間がもったいない」「やるべきことはやったの?」と、大人も子どもも何かに没頭することをなかなか許してもらえないような雰囲気がありますが、大好きなことに夢中になれることそれ自体は素晴らしいことだと思います。一方で、人生の中で「余白」ができることもあります。学校に行けなくなったり、出産や介護で仕事を中断することになったり、会社を辞めたり、休職することになったりと本人が希望するしないにかかわらず空白期間ができる可能性は誰にでもあるはず。私自身、出産で思いがけず家事育児中心の生活になりました。でもその空白期間だって、後から考えれば決して無駄ではなくて必要な時間だったはず。空白期間があっても“全然OK”と今、学校や仕事を休んでいる人を応援できる場所でありたい。その思いを店名に込めました。
VERY世代は子どもの気持ちに寄り添うのが得意
──前半でもお話しいただいた「ちょっと大変な親の会」などの活動を通して気づいたことはありますか?
悩みは人それぞれですが、低学年でいじめにあっているというわけではないけれど、学校になじめない子が意外に多いなという印象がありました。娘もこのタイプです。ただ、今の親は子どもととても仲が良いケースが多く、ちゃんと話を聞いて我が子のちょっとした変化にも気づくのが得意なのではないかと感じています。もちろん、そんな親ばかりではないとは思いますが、昭和世代の私の頃よりは親子の仲がいいのでは?と思います。私の子どもたちもその傾向にありますが、学校が苦手な子にはHSC(人一倍敏感な子ども)の子どもが多いようです。ただ、この悩みを抱える子は昔もいたはず。ひと昔前ならHSCが認知されておらず、本人がどんなにつらくても「打たれ弱い」「なまけ癖がある」などといって片づけられていたケースも多いでしょう。少し前から「毒親」という言葉が話題になりましたが、今の30、40代は自分が親からされて良かったこと悪かったことを踏まえたうえで育児をしているよう。我が子との向き合い方は、私たちが子どもだった時代と比べてアップデートされている気がします。
──「学校に行きたくない」子の親に伝えたいことはありますか?
自分と子どもとは、親子とはいえ全く別の人間なんだと思うことが大切なのではないかなぁと思います。私たち親世代は、「普通に学校に行くことが当たり前」という環境で育ってきましたが、それは自分の視点でしかないと認識すると少し楽になる気がします。自分と子どもは生きる時代も場所も性格も違うと意識することによって、子どもの視点に立ってあげやすいのではないかと私自身は思うようになりました。
休校期間に考えた「学校って何なんだろう」
──この春は小学校が休校になったり、緊急事態宣言が出たりと予想外の出来事が続きました。
正直きつかったです。緊急事態宣言により一時閉店しましたが、開業したばかりで閉店するのは大きなリスク。一日中家族だけと過ごし、ごはんを三食作ったり、いろいろとしんどかったです。本当は早く店を開けたいなぁと思いましたが、万が一感染拡大したらと考えるとちょっと怖いなぁと思いました。休校になったことで、今までの学校とか教育って何なんだろう?と考えたりもしました。アメリカの小学校は通学せずホームスクーリングでも卒業可能ということは知っていたけれど、じゃあ他の国ではどんな教育をしているのか?と目を向けるきっかけにもなりました。なかでもスウェーデンをはじめ北欧諸国の取り組みは興味深いもの。教育ファシリテーターの武田緑さんのnote(「現地で感じた、スウェーデンの民主主義と教育。一人ひとりが「声」をあげられる身近な場、それを届ける仕組みへの信頼。」)を読んで勉強したりもしました。日本の教育制度そのものを今すぐがらっと変えるのは難しいですが、ただ元の学校生活に戻すだけではなく、この逆境が少しでもいい方向に転換できる機会になったらいいなあ、と思っています。
──お店が再開したら、どんな人たちに来てもらいたいですか?
今までとは形態を少し変えて、月に一、二度は親子やおしゃべりしたい方が無料でお店に来られる無料開放タイムを作ろうと思っています。家事、育児に追われる親がちょっとひと息ついたり、家よりも集中できる環境で仕事をするためにも使ってほしいです。ワークショップを開いたり、ギャラリースペースや好きなことに没頭する会(マイクラ会、ガンプラ会など)でも使ってもらえたらなぁと思っています。リフレクソロジストとして私が施術をしてますので、疲れを癒すために来ていただくのも大歓迎です。不登校に限らず、親が楽になって余裕や笑顔が増えることが子どもにとっては、いちばん嬉しいはず。これは私自身が常に思っているのですが、普段の生活のなかではなかなか難しいですよね。不登校も含め、“みんなと同じ”ことが苦手だったり、“普通のこと”ができないと思っている方、休職、求職中の方などにリハビリ的に社会と繋がる場としても使ってもらえたらと思っています。
取材・文/髙田翔子