旅は非日常の時間を楽しむもの。だから普段とは違うロケーションが大事と考えがちですが、滞在先での過ごし方によっては、都心であっても非日常の豊かな時間が広がります。都心の日本旅館【星のや東京】が、２０１８年に開始した「深呼吸養生」は、自律神経のコントロールにもつながる呼吸に注目。呼吸をととのえることで、心と体もととのえようというプログラムなのです。

朝7時から行われている「めざめの朝稽古」（30分／無料・要予約）。短い木刀を握り、呼吸をととのえながら江戸時代から続く剣術の流派〝北辰一刀流〟の剣術所作を行えば、ゆっくりと体が目覚めていくのがわかります。「深呼吸養生」のプログラムに限らず、星のや東京では随時行われているアクティビティです。

専属のコンディショニングコーチが体の関節の可動域や柔軟性、筋肉のバランスなどを確認、分析して、その人に合わせたパーソナルトレーニングを行います。自分に適した健康的な体づくりのためのコンディショニングメソッドを学ぶことができます。

1日目の「ボディリメイク」によって呼吸の方法を体で理解した翌朝、深呼吸のリズムに合わせて行うストレッチです。体の隅々にまで意識を行き渡らせることで体だけでなく心もととのえるストレッチ。室内に漂う柑橘系の爽やかな香りもリフレッシュ感を高めてくれます。

アロマの基礎知識や香りの特徴などを学び、日本の植物から抽出した和精油を含む12種類の天然アロマの中から好きな香りを選んでオリジナルのブレンドオイルを作ります。完成したオイルはアロマストーンとともに持ち帰り、自宅で楽しむことも可能。香りを感じ、知り、作り、香りで感覚をととのえます。

30種類以上の季節の野菜を中心とした食材を用いて作られた24の小皿と豆のスープの特製ランチ。桜蓮根の甘酢漬け、蕗の薹天婦羅、芽キャベツのグリエなど、味わいや香り、食感、彩りなど五感で楽しむ食の体験。

写真左：上質な眠りも提供。静寂な森林をイメージした香り、温度、湿度、明るさの調整、4種類から選べる枕とオリジナルの抱き枕も用意されています。
写真右：客室は「菊」「百合」「桜」の3タイプ。こちらは角部屋の「菊」。障子に映り、影を作っているのは、建物の外壁を覆う江戸小紋〝麻の葉崩し〟のパターンです。その様子は季節や時間帯で異なります。

撮影／福知彰子　取材・文／齊藤素子　デザイン／VERSO　構成／川原田朝雄