HIKAKINより再生されるママYoutuber“なーちゃん”が語るYouTuber生活の理想と現実とは?
家事の間や出先で、子どもにiPadを渡しておいたりと、ついついお世話になりがちな「YouTube」。今回、親子でYouTubeに出演するカリスマ・ママたちを直撃。生活リズムは? プライベートは? 周りの反応は?そしてあまり詳しく聞けなかったけど、収入は?気になる“ママYouTuber”のリアルに迫ります。今回は、ママYoutuberの走り「なーちゃんねる」のなーちゃんにお話を伺いました。
※取材内容やチャンネル登録者数、動画再生回数はすべて1月24日現在のものです。
◉なーちゃんねる
長男のこうちゃんと一緒に泥んこ遊びをしたり、虫を捕まえに行ったりするファミリー系チャンネル。現在はお母さんのなーちゃんがYouTuber養成講座「ナマケモノ大学」チャンネルを解説し、話題を呼んでいる。
開始一年半で月収100万円超
専業主婦から会社経営者に
--「HIKAKINより再生される美人YouTuber」としてメディア露出されるなど話題ですが、当初からYouTuber を目指していたのですか。
きっかけは、離れて住む祖父母に孫の様子を見せてあげようと思って始めたんです。だからYouTube を仕事にしようなんて気はまったくなかったんですが、始めて一年半くらいでヒットが打ててしまったんです。
具体的に言うと、息子がアンパンマンの風船で遊ぶ動画が当たったのでいろいろ試して分析してみたら、子どもには「丸いもの」がウケることがわかり、ボールプールの動画を作ったらまたヒット。今度はアンパンマンとボールを掛け合わせて……みたいにやっていったら、凄い速度で再生回数が伸びていきました。14年の2月にチャンネルを開設し、16年の年末には月100万以上稼いでいたので、それまでは専業主婦でしたが、会社化することにしたんです。
--稼ぐYouTuberは、かなりの時間を動画制作に費やすものですか。
手を動かす撮影や編集の時間は大したことはないんです。それより一番時間がかかるのは「下調べ」ですね。今どんな動画が求められているのかチェックする作業は絶えずやっていますし、それこそ世界中のものを見ます。
以前アメリカのサバイバル系の動画で手のひらサイズのタコを紹介したものがヒットしていたので、なーちゃんねるでもやろうと思ったのですが、そんな小さなタコが日本のどこで捕れるのか調べる〝ロケハン〞にもかなり時間がかかります。この時は新潟の離島にぴったりの場所を見つけましたが、いざ撮影となっても天候に左右されることもありますし、タコが釣れないことだって考えられます。そのため余裕を持って二泊三日で日程を組み、やっと求めていた動画を収めることができました。
決まったイベント、たとえばユニバーサル・スタジオ・ジャパンで恐竜を撮る場合でも、まずは下見します。恐竜が出る順番と時間、種類と立ち位置を確認して、その後にようやく本番の撮影をします。寸劇だったら、撮影台本となる絵コンテも描きますね。それくらい準備を徹底してやるほうが、編集が楽なんです。
「楽に稼げて良いね」と言われますし、実際、無邪気に遊んでるだけに見えるように作っているのでいいんですが、そんな動画でも、現実にはかなりの周到さで作られているんです。
子どもがYouTuberになりたがったら
全力で阻止します
--YouTuberになろうと決めたのは会社化のタイミングですか。
会社化したことと、仕事として割り切らないと辛いと思ったのが理由です。家の中に撮影用のボールプールがあったり、家族でどこかへ遊びに行ってもついカメラを回そうとしたりする毎日にうんざりしちゃったんです。特に日常系のチャンネルや毎日投稿のチャンネルだと、どうしても仕事とプライベートがうやむやになりがちです。それが段々精神的にキツくなってきたことで、完全に仕事として切り離して考えないとダメだなと思いました。それからは家で撮れる動画もスタジオを借りて撮影してますし、衣装もメークもおもちゃも撮影用と私物を完全に分けるようにしています。
チャンネルがある程度の規模になり、趣味が高じて始めたものが成功してくると、必ずそういうジレンマが訪れます。それと同時に、動画の内容自体も「皆が見たいものと私がやりたいことってズレてる?」みたいな瞬間が絶対にきます。そうなったら、「仕事と割り切って、視聴者が見たいと思うものを作りなさい」とアドバイスするようにしています。
--「アドバイス」というのはYouTuber になりたい人に向けて、ですよね。
そうです。ヒットを連発していた17年ころから「なーちゃんねる」に対してモチベーションがなくなってしまって……。キッズ系の動画に関してはやりきった感があり、気分としては攻略済みのゲームみたいな感じなんです。
なので今は、YouTuber 向けのビジネス系動画をメインに更新しています。コンサルタント業もしていますよ。
――お子さんが将来「YouTuberになりたい」と言ってきたら?
息子のこうちゃんは今でもYouTube に出ていますが、普段はYouTuberであることを忘れてほしいんです。彼には登録者数や再生回数のことも教えていませんし、動画の撮影でも、何も考えず自由に遊んでほしいと思っているんです。
子どもが「YouTuber になりたい」と言ってきたら、全力で止めますね。この前も「ゲーム実況動画をやりたい」と言ってきたので企画書を出させましたが、「小学生のたどたどしい実況を誰が見る?」と話して、バッサリ切りました。仕事はそんなノーテンキなものじゃないですからね。そもそもYouTuber になるための勉強もなければ、資格があるわけでもない。今、子どもが何をすべきかといえば勉強や部活や習い事で、それらを通じて努力や成功体験を積まないと結局、YouTuber をやっても続かないと思うんです。
--では、お母さんでYouTuber になりたい人へのアドバイスはありますか。
世界で一番稼ぐYouTuber の少年でライアンくんという子がいるんですけど、その子のお父さんは、YouTube の広告収益だけではないビジネスを展開していると話していました。また、登録者数100万人超のYouTuber の方々とも交流があるんですが、その人たちの中で「YouTube 大好き!」って人は稀で、皆かなり冷静に研究対象として動画を見ています。彼らとの会話も、「いかにYouTube の“外側”で稼ぐか」という話です。特にYouTubeの子ども向けチャンネルはガイドラインの変更が激しく、収入が不安定にならざるを得ません。だから私のもとに相談に来る20〜40代の女性には、料理や整理術といったライフスタイル系のチャンネルをおすすめしているんです。
「なーちゃんねる」DATA
■名前・年齢:なーちゃん(本名非公開・30歳)
■所属事務所:アナライズログ
■チャンネル開始日:2014年2月
■チャンネル登録者数:213万人(2019年12月時点)
■動画再生回数:約9億回
■家族構成:夫(会社経営/48歳)、長男(こうちゃん/7歳)、長女(1歳)
■撮影機材:カメラ→iPhone 11 Pro、iPhone X/
■編集機材:MacBook Pro・Final Cut Pro X
■現在の更新頻度:月2〜3本
■自薦イチオシ動画:「海の干潟で泥んこ遊び!ドロだらけになってあそぶ」
「思い出深い動画」として挙げてもらった1本。どろまみれになってひたすら干潟で遊ぶこうちゃんの3分の映像は、なんと再生回数約3億回!
https://www.youtube.com/anpanmanthomas1/
撮影/古本麻由未 取材・文/小泉なつみ 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2020年3月号「再生回数億単位のレジェンドたちに聞きました! ママYouTuberって、どうですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。