【インタビュー】アクセサリー作家「michu」が伝えたいこと
可愛くてドリーミーで憧れる。そんな世界をつくり続けるクリエイターに今までのこと、これからのことをインタビュー。今回お話を伺ったのは、2007年に「MICHU COQETTE」をスタートさせ、現在、アクセサリー作家・雑貨デザイナーとして活躍するmichuさん。アクセサリーや雑貨など、唯一無二の作品を創り上げる彼女に迫りました。
Interview
「MICHU COQUETTE(ミチュ コケット)」のオーナーであり、アクセサリー・雑貨デザイナーとしても活躍するmichuさん。彼女が生み出すガーリーで唯一無二のアイテムが、たくさんの女の子達に広く愛されている一方、彼女自身のことについてはさほど語られてきませんでした。今回は、そんなmichuさんにお話を伺うため、2019年11月にオープンした原宿・キャットストリートのアトリエにお邪魔しました。
「昔から可愛いものが好きでしたね。でもどちらかというとタートルネックにオーバーオールを着ちゃうような、ガーリーとは程遠い幼少期。厳しい両親だったので、私はかなり我慢をしていて。そのぶん、絵を描くことや空想に逃げてバランスを保っていたんです。バイトをして自分で洋服を買えるようになった大学生のとき、ついに抑えていたものが爆発して(笑)。ショッキングピンクの服を着て帰省したときには、その派手さ加減に母にめちゃくちゃ怒られました」
けれど意外にも、大学卒業後にmichuさんが選んだのはCAの道。両親にも怒られることのないようなコンサバティブなファッションに身を包み環境に馴染もうとしながら、自分は将来一体何者になるのかを模索していたそう。やがて結婚、妊娠を機に専業主婦になったmichuさんは、ミシンを引っ張り出し、生まれてくる息子さんのおくるみや洋服をつくるようになります。好きなものを自由につくる楽しさに、出産後も情熱が冷めず、本格的に物づくりをスタートすることを決意。2007年に「MICHU COQETTE」を立ち上げました。
「結構遅咲きですね。当時はSNSもない時代だから、イベントに出店して、とにかくたくさんの人に作品を見てもらうことから始めて。そこでありがたいことにバイヤーさんが声をかけてくださり、これに乗らない手はない! と波に乗りました。1回1回をとにかく一生懸命に、それが次につながり、販路が広がって……その繰り返しで12年が経ちました」
デザイナーが年齢を重ね、方向転換をするブランドも多い中、MICHU COQUETTEの世界観はスタート当初から変わりません。ピンク、ヴィンテージ、ガーリーでコケティッシュなモチーフ……この12年間、悩んだ時期はなかったのでしょうか。
「年齢というよりは、流行の壁にぶつかることはありました。変わらない自分の少女性や感覚が支えてくれた部分はもちろんあるのですが、ガーリー全盛期が過ぎ去りシンプルが支持される今の時代に、一体何が売れるんだろうって悩んだ時期もありました。でも信頼する友人が、“何でも、はやり始めてから始めるより、もうずっと前からやってきてるというほうがかっこいい。昨日今日じゃなくて続けているというのは大きい”って言ってくれたんです。彼女に背中を押してもらえたことで今のスタイルを続けていこう、看板を守ろうと決めました」
「自分の本音ってめちゃ大事!」とmichuさんは言います。
「世間体や、親がこう言うからとか、迷うことももちろんあると思います。私も一度はCAになって頑張りましたが、本当はこっちがやりたいという思いを捨てきれず、並行して学校へ通い学ぶことも続けて。ここに辿り着くまでに回り道にはなったけど、自分の本音に耳を澄ましてからようやく自由になれました。たくさんのものを見たり、経験したり、少しずつ始めてみたり、自分の中のワクワクする瞬間を知るうちに、本音に近づける気がします」
貫くこと、続けることは勇気が必要だけれど、本音と向き合えていれば迷わず前に進める。michuさんを見ていると、それがいかに大切なことかを実感します。そんな彼女がこれからしたいこととは……?
「フランスのリールで年に一度開かれているアンティーク市に今年は行きたいと思っていて。息子が大学生になるので、ようやく今年からそれが実現できるなと。これからまた新しい私って感じです。アトリエを構えるのに貯金をすべて使い果たしたので(笑)、たくさん働かないと! でも、そのために働けることが活力です」
鴨居羊子著『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい』
「ボロボロになったけれど、とても大切な一冊です」
CA時代の貴重な一枚。「コンサバティブなファッションのとき。スカーフが定番アイテムでした」
ブランドを立ち上げてすぐ、デザインフェスタに出展したときの写真。ここから道が開けました。
michu
michu・アクセサリー作家、雑貨デザイナー。2007年「MICHU COQUETTE」をスタート。’50年代のヴィンテージカボションを使ったガーリーでロマンティックなアクセサリーやポーチ、雑貨など、創造するものは多岐にわたり、唯一無二。
Interview_Sonoko Fujii