旅好きが本気で推す「また行きたい、伝えたい」日本の宿5選
ラグジュアリーな海外旅行を十分に経験してきた今、改めて国内旅の魅力に気がついたという人が増えています。
仕事やプライベートで数多くの旅をしてきた「旅好き」の方々に、心が震えた旅のエピソードと宿を教えてもらいました。
今回は12月号本誌より、一部抜粋してご紹介します。
■温泉ビューティ研究家・石井宏子さん
温泉の美容力を研究する日本でただひとりの温泉ビューティ研究家。温泉、自然環境、食事、宿での過ごし方などを通じて心も体もきれいになる新しい旅〝ビューティツーリズム〟を提唱。
石井さんおすすめの宿【湯治 柳屋】
<写真>大分産の食材と地獄蒸しを活かした、ここでしか味わえない至福の一品は目も舌も肥えた大人をうならせる。
温泉で、地獄蒸しで、その土地のエネルギーに触れる。自分メンテナンスの旅
50代女性には、自分メンテナンスのための温泉でのひとり旅がおすすめ。温泉は体や肌だけでなく、心も健やかにしてくれます。
そんなひとり旅にぴったりの宿が、大分県別府の鉄輪温泉「湯治 柳屋」。宿に入るとまず目に入るのは、温泉の蒸気で食材を調理する鉄輪温泉の名物「地獄蒸し」の釜から立ち上がる湯けむり。温泉のミネラルを豊富に含んだ蒸気のおかげで、野菜のうまみと甘みをしっかり味わえ、魚介や肉は本来のおいしさが引き出されます。
この宿の中にもゲストが自由に「地獄蒸し」の調理ができる釜があり、宿泊者たちのちょっとした社交場になっています。野菜をお裾分けしたり、おいしい食材の情報を交換したり、自然に会話も弾み、ひとりで訪れても楽しめます。
宿の中庭には極上の地獄イタリアン・レストランもあり、気分によって食事を選べるのも魅力。
温泉に入り、「地獄蒸し」を味わうことで、ダブルでその土地のエネルギーを分け与えてもらえます。
湯治 柳屋
大分県別府市鉄輪井田2組 鉄輪銀座通り
☎0977-66-4414
https://beppu-yanagiya.jp/
■旅行作家・山口由美さん
神奈川県箱根町生まれ。旅とホテルを主なテーマにノンフィクション、小説、エッセイなど幅広い分野で執筆。『アマン伝説』(光文社知恵の森文庫)など著書多数。
山口さんおすすめの宿【ホテリ・アアルト】
<写真>国立公園の中にあり、冬は別館前の沼の周りでスノーシューでの散歩が楽しめます。
自然と美しい建築物と家具。「また行きたい」と思わせてくれる清楚なラグジュアリー
旅先を選ぶ時、お気に入りの宿を決めるより、毎回、新しい発見を求めてきましたが、また行きたいと、季節を変えて何度となく行くようになったホテルがあります。
それが福島県にある「ホテル・アアルト」。
端正で美しい建築と、北欧家具の居心地のいい空間でゆっくりとした時間が楽しめるホテル。
おすすめは冬。スキーリゾートのエリアだけれど、あえてスキーをする計画を立てずに行く。ここは何もせず、読書と温泉だけでゆっくり過ごしたいと思わせてくれる宿だから。
日本にはなかなかないシンプルで清楚なラグジュアリー、「何もしない」贅沢を楽しめるホテルです。
ホテリ・アアルト
福島県耶麻郡塩原村大字檜原字大府平1073-153
☎0241-23-5100
https://hotelliaalto.com/
■旅ライター・塩田典子さん
女性誌、旅行誌、企業のPR誌などで活躍する、フリーランスの旅ライター。主に国内旅行をテーマに取材・執筆を行う。月平均10日間は旅の空という生活を10年以上続けている。
塩田さんおすすめの宿【山中温泉 花紫】
<写真>ホテルに面した渓谷の美しさを堪能できる鶴仙峡。川沿いにあるお散歩道から黒谷橋を仰ぎ見ることができます。
日本の伝統的な旅館の古き良きおもてなしに心地好さを感じた旅
北陸新幹線の開業もあって山中温泉を訪ねてみたいと思っていた時に、「花紫」の他にはない「アラカルト懐石」に興味をひかれ、宿泊することに。
「アラカルト懐石」は、約50種類のその日の献立から好きな料理を選ぶというもので郷土料理の治部煮や白えびのかき揚げ、旬のものをふんだんに選び、満足のいく自分だけの懐石コースに。
深く印象に残ったのは、日本旅館の伝統的な「おもてなしの心」。
以前の私なら、お部屋係の仲居さんがいる旅館は知らず知らずのうちに敬遠しがちだったのですが、仲居さんのつかず離れずの絶妙な距離感がとても心地好かった。
また食事の際に粗相があった時の対処が素早く的確で、気持ちをくみ取ったきめ細やかな対応に目を見張りました。
「これぞ日本が誇るおもてなし」とあらためて古き良き日本旅館の魅力を感じました。
山中温泉 花紫
石川県加賀市山中温泉東町1丁目ホ17-1
☎0761-78-0077
https://www.hana-mura.com
■フォトグラファー・吉澤健太さん
ポートレートや旅を中心に食、インテリア、時計、車、スポーツ撮影など幅広くこなすフォトグラファー。HERSを始め、多くの媒体で活躍している。
吉澤さんおすすめの宿【大谷山荘 別邸 音信】
<写真>その土地で採れたものを、その土地の料理法で、その土地で食すという「三土料理の哲学」を基本にした会席料理。
街ぶら散歩で出会う人との会話を楽しみ、温かさや優しさにふれる旅
「大谷山荘 別邸 音信」は三方を海、中央を山々に囲まれた湯本温泉にある和風旅館。
のどかな里山、渓流のせせらぎ、源泉かけ流しの露天風呂、新鮮な食材を使い、美しく盛り付けられた料理は最高のもてなし。宿で温かくもてなされると、自分も優しくなれる気がします。
地方の街にはまだ昭和な店が残っていて、雰囲気が良さそうな店にふらっと入ると地元の生き字引のような人に出会えたりします。飲んでいるうちに会話を交わすようになり、昔話を聞けたり、地元人しか知らないおすすめのディープな場所を教えてもらったり。そんなふうに教えてもらった場所には行くようにしています。
思いがけず魅力的な景色に出合えると、気分が高まります。
大谷山荘 別邸 音信
山口県長門市深川湯本2208
☎0837-25-3377
https://otozure.jp/
■ヘアメークアップアーティスト・山本浩未さん
資生堂美容学校卒業後、資生堂ビューティクリエーション研究所にてヘア・メークアップアーティストとして宣伝、広報、商品開発、教育などに従事。1992年よりフリーとして活躍中。
山本さんおすすめの宿【ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道】
<写真>山本さんが感動した客室展望風呂から見るしまなみの絶景。
思いがけず心魅かれるものに出合う。それが国内旅の醍醐味
40代はラグジュアリーや美容スパ、50代の今はその土地の生活や文化を知り体験する旅。最近は海外よりも、自然に興味ある情報が集まってくる国内へ旅することが多くなりました。
「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」は地元の知人が教えてくれたホテル。このホテルは私の地元の福山市と尾道市の境にあります。高校を卒業してすぐに福山を出てしまったので、実は地元で知らないことも多く、このホテルから見る瀬戸内海の美しさもまた、私が知らなかったことのひとつ。
ホテルで教えてもらった「神勝寺」ではいい出会いが。芸術家の名和晃平氏とコラボしたアートパビリオン、白隠のミュージアム。思いがけず知的好奇心をくすぐられる場所でした。
ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道
広島県尾道市浦崎町大平木1344-2
☎084-987-1122
http://www.bella-vista.jp/
取材・文/北川真紀子 構成/永吉徳子