あなたは何個分かる?大人の気遣いを示す「クッション言葉」10選
お願いをするとき、断るときなど、伝え難いことを言う場面では、相手に対する配慮を示す必要があります。
「すみませんが」などと一言前置きをするのが大人のマナーです。この本題の前の一言を「クッション言葉」と呼びます。
遠慮やいたわりなどの気遣いを示すクッション言葉、あなたはどれぐらい使いこなせていますか?
(1)よろしければ
例:よろしければ、今度ご一緒させてください。
イヤでなければ、差し支えなければ、という意味です。「よろしければ(もしよかったら)」「できれば(できましたら)」は基本のクッション言葉として覚えておきましょう。
(2)恐れ入りますが
例:恐れ入りますが、もう少しお静かに願います。
恐縮する気持ちを表すクッション言葉です。
クッション言葉を使おうとすると、「すみませんが」の連発になってしまう人がいます。
あまり同じ表現が続くと、うっとうしく感じられます。時折「恐れ入りますが」や「恐縮ですが」も織り交ぜるようにしましょう。
(3)申し訳ございませんが
例:申し訳ございませんが、予定よりも到着が遅れそうです。
謝罪のクッション言葉です。
カジュアルな会話では、「悪いんだけれど」「ごめんだけれど」などと使われていますが、仕事やアルバイトで顧客に接するときには、「申し訳ございませんが」のように、あらたまった表現が必要です。
(4)心苦しいのですが
例:ご無理を申して心苦しいのですが、打ち合わせの予定を変更できませんか?
無理を言ったり、迷惑をかけたりするときに使うクッション言葉です。
自分の都合や事情に相手を巻き込んで申し訳ない、そういう気持ちをこめて使います。
このクッション言葉を使うことで、むちゃぶりという印象が軽減されます。
(5)失礼ですが
例:失礼ですが、名字は何とお読みすればよろしいですか?
プライベートを尋ねるなど、失礼に当たるかもしれないことを質問するときに使います。
仕事を催促するときにも、「失礼ですが、締切が迫っている案件のため、念のためご連絡いたしました」などと用いましょう。
同様のクッション言葉に「失礼ながら」「不躾(ぶしつけ)ですが」があります。
(6)お忙しいところ恐縮ですが
例:お忙しいところ恐縮ですが、できるだけ早めにご対応ください。
相手の忙しさを気遣い、遠慮しながら頼む表現です。
締切の近い案件、優先順位の高い案件を依頼するときには、このクッション言葉を付けましょう。
ほかに「ご多忙のところ」などの表現もあります。
(7)お手数をおかけしますが
例:お手数をおかけしますが、こちらの書類にご記入・ご捺印をお願いいたします。
書類の記入など手間のかかる作業に協力してもらうとき、あらかじめことわります。
ほかに「お手間ですが」「ご面倒をおかけしますが」など。
(8)ご足労をおかけしますが
例:ご足労をおかけしますが、次回は弊社までお越しいただけたら幸いです。
相手に自分のところに来てもらうとき、わざわざ足を運んでもらうときに使います。
「ご足労をおかけしました、ありがとうございました」などと、ねぎらいやお礼にも使います。
(9)あいにくですが
例:あいにくですが、新商品はただ今、入荷待ちになっております。
クッション言葉「あいにくですが」は、相手の期待に添えない無念さをにじませる表現です。
たとえば、顧客の要望に応えられないとき、在庫切れや満席などを案内しなくてはならないとき、会社のルールで厚意を受けられないときなどに使います。
「個人的には残念なのですが……」という思いをこめて使いましょう。
(10)光栄なお話ですが
例:光栄なお話ですが、目の前の業務で立て込んでおり、お力になれそうにありません。
断るときのクッション言葉です。
何かをお願いされたり、昇進やプロジェクト参画の打診を受けたりした場面で用います。
話自体は名誉で嬉しいのだが、と説明することで、相手の気分を害さないようにします。ほかに「身に余るお話ですが」「もったいないお話ですが」「せっかくなのですが」。
以上、10個のうち、普段から使いこなせているクッション言葉はいくつありましたか?
なお、依頼をする場合、初めにクッション言葉をつけるだけでなく、文末の部分をやわらかい言い方にすることも意識するといいでしょう。
「〜しろ」「〜しなさい」などは論外ですが、「〜してください」と依頼するのでも、有無を言わさず手伝わせるようなニュアンスになってしまうことがあります。
・〜していただけないでしょうか?
・〜していただけたら幸いです
・〜いただければと存じます
・〜願えませんか?
(もう少しカジュアルな場合)
・〜してもらえませんか?
・〜してもらえると助かります
以上のような文末表現を使いこなしましょう。
クッション言葉を前に付け、やわらかめの文末で終える。こうした依頼、お願いの仕方を覚えておけば、気持ちよく手伝ってもらえます。
なかなか人に頼れないコや、はっきり断れないコも、言い方をマスターすることで、本音を切り出しやすくなりますよ。
文/吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。
画像/PIXTA(ピクスタ)(topic_kong、アン・デオール 、Fast&Slow 、Claudia、Pangaea、Glampixeⅼ) 参考文献/吉田裕子『正しい日本語の使い方 新装版』(エイ出版社)