静岡のはんぺんはなぜ黒い!?
全国的にはんぺんといえば白くて四角いものが思い浮かびますが、ここ静岡県では写真のものをはんぺんと呼んでいます。通称「黒はんぺん」。イワシやサバなどの魚を骨ごとすり身にして調味料と混ぜた、静岡県の名物です。有名な「静岡おでん」に入っているはんぺんが黒い!ということで注目を浴びましたが、静岡では、おでんもはんぺんも一年中食べる、県民食なんです。
実際、静岡県内のスーパーやドラッグストアの練り製品コーナーでは黒はんぺんが何種類も置かれています。原材料や成分はほとんど変わりませんが、大きくて厚みのあるものから食べやすく薄いものまでタイプはさまざま。魚をまるごと使っているので、カルシウムなどの栄養も豊富です。生でそのまま食べることも可能で、マヨネーズやしょうゆとの相性も抜群です!
静岡県民は黒はんぺんを料理に合わせて使い分けています。薄いタイプは主に煮物や薄焼きに、厚いタイプは黒はんぺんフライやご進物用に、というこだわりがあります。今回は静岡県民が日頃つくっている黒はんぺんの王道料理と手軽なアレンジ料理をご紹介します!
黒はんぺんの煮物
<材料>2~3人前
黒はんぺん…8枚
にんじん…1本
さつまあげ…4~5枚
だし汁…250ml
しょうゆ…大さじ1
砂糖…大さじ2
黒はんぺんは中心から半分に切り、にんじんは皮をむいて大きめに切る。鍋に具材とだし汁と調味料を入れ、15分ほど煮込んで完成。
静岡県内での主な産地は焼津市、沼津市といった魚の漁獲高が多い港町です。その周辺では黒はんぺんは「はんべ」と呼ばれ、愛されてきました。この煮物は「はんべの煮物」といわれ、昔から家庭でつくられてきたお母さんの味として象徴的なものです。黒はんぺんから出た魚のうまみがにんじんやさつまあげにもしっかりと染み込んでいて、冷めても変わらぬ美味しさです。残ったつゆも白いごはんにかけてペロリと食べられます!
だしの色が黒いことで有名な「静岡おでん」。必ずといっていいほど入っている黒はんぺんは不動の地位を築いています。静岡おでんに使う黒はんぺんは家庭やお店によっても厚さがさまざまです。
静岡おでん
<材料> 4~5人分
黒はんぺん…8枚
ちくわ…5本
ごぼう巻き…5本
なると…5切れ(斜めに切ったもの)
こんぶ…結んだものを7本
ゆで卵…5個
大根…1本(下茹でをして輪切りにしたもの)
こんにゃく…1枚(三角に切っておく)
静岡おでんのだし汁…900ml
いわし粉末と青のりを混ぜた粉…適量
下茹でした具材に竹串をさす。具材をだし汁とともに2時間ほど弱火でじっくりと煮込む。具材に火が通ったらお皿に盛り付けて、いわし粉末と青のりを混ぜた粉をかけて完成!
濃い味に見える黒いだしは見た目以上に優しい口当たり。それでいて味はしっかり染みている黄金バランスです。黒はんぺんから出ただしも他の具材を邪魔することなく、おでんの味に深みをあたえています。いわし粉末と青のりを混ぜた粉をかけて食べるのが静岡流。静岡県内では当たり前のように駄菓子屋やスーパーで販売されています。好きな具材を選ぶ楽しみもあり、子どもから大人まで大人気! ご飯のお供やおつまみにもぴったりです。“ビールのつまみにおでん”というのが静岡県民の夏の風物詩です。
黒はんぺん焼きのおろしのせ
<材料> 1~2人分
黒はんぺん…5枚
大根おろし…300g
刻みしょうが…適量
万能ねぎ…適量
なめたけ…適量
梅肉…適量
いりごま…適量
薄口しょうゆ…適量
ごま油…適量
フライパンにごま油をひき、黒はんぺんの表面がきつね色になるまで焼く。お皿に並べ、大根おろしを好きなだけのせる。その上にしょうゆをかけ、具材をのせて完成!
こちらも手軽で美味しく味わえると人気の黒はんぺんの薄焼き。イワシの香りが大根おろしの風味と良い具合にあいまって、日本酒のお供にオススメしたいレシピです。また、もう一品足りないという時のおかずの救世主にもなります。黒はんぺんは薬味との相性も良いので、暑い時期にはおそうめんの付け合わせにもGood!
黒はんぺんのハートうどん
<材料> 1人分
黒はんぺん…5枚
うどん…1玉
うどんのつゆ…250ml
天かす…適量
ねぎ…適量
なると…お好みで
七味…お好みで
あらかじめハートに型抜きをしておいた黒はんぺんを出来上がったうどんに乗せて完成!
煮込まれたうどんと黒はんぺんとの食感はもっちり。汁の中に溶け出した魚の風味がふんわりと口いっぱいに広がって、奥深さのある味わい。食欲がない時や夜食にもぴったりです。型抜きをしたときに余った部分は細切りにしてきんぴらや和え物にも活用できます。
黒はんぺんたまごサンド
<材料> 2~3人分
黒はんぺんフライ…5枚
サンドイッチ用の食パン…6枚
ゆで卵…3個
レタス…6枚
塩こしょう…適量
マヨネーズ…適量
ソース…適量
ミニトマト…お好みで
黒はんぺんフライの表面に軽くソースをぬっておく。ゆで卵を使ってマヨネーズと塩こしょうで和えてサラダをつくる。食パンの片面にマヨネーズをぬり、その上からレタスを2枚のせる。たまごサラダをのせ、黒はんぺんフライを挟んで食パンを半分にスライスしたら完成!
サクッとした黒はんぺんフライがまろやかなたまごサラダと口の中で幸せな食感をうみだします。これからのシーズン、お花見やピクニックにもってこいのサンドイッチです!
黒はんぺんのライスバーガー
<材料> 2人分
黒はんぺんフライ…4枚
ごはん…600g
レタス…4枚
大葉…4枚
マヨネーズ…適量
ごま油…適量
片栗粉…適量
糸とうがらし…お好みで
ミニトマト…お好みで
白米に片栗粉を混ぜ込み、円状にしたごはんの表面におこげができるまでごま油で焼く。レタスと大葉をのせ、黒はんぺんフライにマヨネーズをかけてライスバンズを挟んで完成!
イワシの香りよりも弾力が引き立ち、食べ応えのあるライスバーガーです。黒はんぺんフライ自体に味がついているので、マヨネーズだけでもしっかりとした味わいが楽しめます。
細切り黒はんぺんのピザ
<材料> 2~3人分
黒はんぺん…4枚
ミニピザ用生地…7枚
カラーピーマン…3個
コーン…適量
薄くスライスした玉ねぎ…適量
ミニトマト…適量
ピザ用ソース…適量
パセリ…適量
生地にソースをぬり、玉ねぎ、カラーピーマン、コーン、縦に細切りにした黒はんぺんをちらすようにのせていく。オーブントースターで5分ほど焼いたら完成!
カリカリのピザ生地とたっぷりの具材、口の中でほんのりと海の香りが広がる簡単シーフードピザです。黒はんぺんとチーズで手軽にカルシウム補給もできちゃうので、魚が苦手なお子さまにもオススメ! ブランチやママ友とのパーティー、おうちでちょい飲みのおつまみにぴったりです!
撮影・取材・文/松下文香